第56話「愛読書はなんですか?」

 先日読んだYahooニュースの記事。


>採用面接のNG質問「愛読書は?」急増、不適切な質問を調べている県教委「個人の自由だ」


>「愛読書は?」。企業の採用選考の面接では、能力や適性に関係がない質問だとして「NG」とされるが、滋賀県教育委員会の高校生対象の独自調査で、愛読書を尋ねた事例が昨年度は前年度の3倍近くに増えたことがわかった。(読売新聞オンラインから抜粋)


 面接で愛読書を尋ねることは、「採用側が能力や適性に関係ない事柄を質問することは就職差別につながる恐れがある。」ので尋ねないよう厚生労働省が企業に指導しているらしいです。


 驚きました。

「最近読んで感銘を受けた本はありますか?」というのは、面接の定番質問だと思っていました。ま、いまどきは新聞も本も読まない人が多いから聞かれないのかもしれないけれど。


 思ったことが二つあります。

 ひとつは「ちょっとそれっておかしくないか?」と思ってしまう。企業は人の集まりです。人っていうのは、良くも悪くも人は似たような価値観を持つ者同士集まる――徒党を組むんですよ。その方が意思決定がスムーズだし、組織としての一体感が生まれるから。


 もちろんその集まりに参加したいけど、「あなたはちょっと違う」と言われて排除される人も出てくるでしょう。でも、それは仕方がない。組織というものは、包摂と排除の論理を同時に内在するものなので。


「同じような思想、信条の人と仕事をしたい」という人の思いを制限しようとするのは、ある意味、非人間的じゃないかと感じました。人を能力と適正にのみ着目し、思想、信条の共有がない人同士が共有できることって、結局「この会社を儲けさせよう」ってことだけに落ち着かないか。それって社会にとって幸せなのかって思いますね。


 もうひとつは定型の面接質問が、機能しないくらい人の興味や価値観の幅が広がっているような気がするということ。


 うちの息子なんて、新聞も本も読まないし、テレビも見ないです。YouTubeしか見てない。そんな子どもが増えてると思うのですが、こういう人に「気になった新聞記事は?」や「最近読んだ本は?」と聞いても「は? 読まないんですけど」と言われるだけでしょう。


 ITが未発達だったむかしなら、本も新聞も読まないなんて、教養レベル、知識レベルの低い人だと判断してもあながち間違いではなかったかもしれませんが、いまはまったくそうじゃないですね。本を読まないから馬鹿だなんて思ってるとしたら、その人の方こそ馬鹿にされるでしょう。知識・情報を仕入れるメディアは本や新聞に限られないので、それを読んでいないから能力が低いなんて、そんなこと言えないのです。


 ただ、わたしが面接官だったら「どんな本読んでるの?」って聞きたくなりますね。古い人間なので。答えてもらったら、ただ「へえ」っていうでしょう。もちろん、ラノベ読んでるという理由で不採用にしたりしません(爆)


https://news.yahoo.co.jp/articles/1bd38c21f41434337f299b40a132eedaf5a58e7a

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