第52話 Web作家、魚を釣る

 アウトドアの趣味は、まったくと言っていいほど持ち合わせていない藤光。この間ここにも書いたバイクを10年近く前に手放して以降、アウトドア系の趣味はまったくなくなりました。ところが――。


 小学三年生の息子と奥さんが「魚を釣りに行く」というのです。「行きたい」ではなく、「行く」というわけ。おいおい、お父さんは釣りなんて知らないよ。釣りをしたのは、人生で三回だけ。小学生の頃、ヘラブナを釣ろうして出かけたけれど釣れなかったことと、高校生の頃、サビキ釣りでアジを釣ったことと、二十代半ばにバス釣りに行って釣れなかったことしかない。お父さんには、なにも期待するなよ。


 さっそく息子と奥さんは、近所の100円ショップへ出かけて、釣り竿とリール、サビキ釣り用の仕掛けとバケツなど釣りセットを購入。わたしは「100円ショップで釣り竿が買えるのか」と驚きました。ま、釣り竿とリールのセットで1000円したそうですが(それでも安くないですか?)。息子と奥さんは、道具を揃えただけでもう魚を釣り上げた気分なっているのか、昨晩はハイテンションでした。わたしは……という感じ。


「行きたくない。家で小説書いてる」

「魚釣りの経験も小説に生かせるって」

「江戸時代にリールないし……」


 で、今日近くの海岸でサビキ釣りをすることになったのですが、まずエサを買いに行かないといけません。釣具屋さんで「アミエビ」を買っていきます。生まれて初めて釣具屋さんでエサ買いました。意外にキレイな店内。楽しそう。安い釣り具も置いてました(100円ショップほどじゃなかったけど)。


 そして、近くの海岸に繰り出すと、釣り竿とリールを取り出し「さあ釣るぞ」と思ったのですが、息子も奥さんも、竿の道糸みちいとに針のついた仕掛けを結びつけることができません。


「やって」


 ――おーい。結局おれがやんのかよ!


 スマホで調べましたよ。いまの時代は便利ですね。昔はど素人ばかりで釣りに行くなんて無謀なことありませんでしたが、いまはネット経由でいろいろなことをその場で調べることができます。リールに糸が巻き付いたときも、ネットのお世話になりました。インターネットさまさま!


 重りのついたカゴにアミエビを詰めて、海に放り込みます。いるいる! 小さなお魚さんがたくさん集まってくるのが岸壁の上からよく見えます。針に食いついてくれるかな~と思う間もなく竿に手ごたえがあって釣れました。クルクルとリールを巻くと、かわいいお魚さんが針の先に。。。イッツ・ビギナーズラック!


 息子と奥さんとわたしで代わる代わる釣りました。1時間半で12、3匹釣れたと思います(みんなリリースしました)。代わりばんこに釣ってる感覚ではほぼ入れ食い状態(笑)家族ででかけたはじめての釣りでこんなに釣れるとは思わなかったので、とても楽しかった。100円ショップの釣りセットで連れたことにも驚きました。


 あとで調べると、釣れたカワイイ魚たちは「スズメダイ」と「グレ(メジナ)」だったようです。狙ってスズメダイを釣る人はほとんどいないらしい。夜に行けば、「サバ」や「タチウオ」で大物が狙えたようですが、わたしたちのようなど素人には荷が重いので、わたしは可愛いスズメダイたちで満足です。岸壁にはわたしたちのほかにも家族連れがたくさんいました。たまにはアウトドアもいいなと思った日曜日になりました。


 おかげで今日は、一文字も小説を書いてないです……。

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