第48話 読んでいて気持ちいい小説がいい

 このあいだ、『文体の舵をとれ ル=グウィンの小説教室』(アーシュラ・K・ル=グウィン 大久保ゆう・訳 フィルムアート社)を買いました。この本は、ル=グウィン自身が開講していた物語作家をめざす人のための体験型講座ワークショップの内容を本に落とし込んだもので、実践形式のテキストです。読むだけではなくて、本の内容に即して習作を書きあげてはじめて「読んだ」といえる本ですね。ちょっと時間がなくて、ほとんど手を付けていない(泣)ル=グウィンは、SF『闇の左手』やファンタジー『ゲド戦記』で有名なアメリカの作家です。


 この本に書いてある最初の課題は、「うきうきするひびきをもった文章を書いてください」です。


 第一章の冒頭を抜粋するとこんな感じです――


 言葉のひびきこそ、そのすべての出発点だ。文章の吟味とはすなわち、「文のひびきは正しいか?」である。言語の基本要素は物理現象――つまり言葉の生み出す音、リズムによって特徴づけられる有音と無音の関係性なのだ。(中略)自分の文体のひびき方を意識できるかどうかは、物書きにとっての必須スキルである。


 ――ほんとにそうだと思う。


 カクヨムでわたしが「いいな」と思う作家さんの文章は、そのリズムとひびき方が素晴らしいものばかり。内容は二の次でとにかく読みたくなる作品というものがたしかに存在します。わたしもできることならそういう小説を書いていきたいとつねに思っています。


 人が「いいな」と思う文章に雛形や正解があるわけではありません。読む人それぞれに合ったひびき方やリズムがあるからです。ただ、それでも美しい言葉に共通するひびき方やリズムというものは存在するはずで、文章を推敲するというのはそうした共通項をどこまで探るか、突き詰めるかという作業ではないかと思います。


 最近のわたしの作品には、推敲が甘いなと自覚しているものが多く、怠けてるな、フォロワーさんたちに甘えてるなと感じます。推敲は文章を声に出して読んでみて、よどみなく流れているか、もっとふさわしい表現はないかということをメインにチェックするのですが、時間がかかるしやりはじめるとキリがありません。ついつい「もういいだろ」となってしまいます。反省。


 リズムのいい文章。読んで気持ちのいい小説を書きたい。Web作家のみなさんは、自作のどこに力を入れてますか。キャラクターの造形ですか。軽妙な会話劇とか意外なプロットでしょうか。大好きな作品の模倣もありかな。読んでもらいたいところはどこですか?

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