第46話 自由になる方法

 世界でいちばん自由な乗り物はオートバイである。


 いかにも昭和的で恐縮ですか、わたしにとってバイクは不良が乗る乗り物のイメージでした。世の中の生き物でなにが嫌いといって「不良」「ヤンキー」「ツッパリ」と呼ばれるたぐいの人たちが一番嫌いだったわたしにとって、自分がオートバイに乗るなんてことは想像の埒外にある出来事でした。


 若いころのわたしは極めて不活発な男で、行動のすべては家と職場を往復するだけで完結していました。あとは本屋さんへ行くか、ゲームを買いに家電量販店に行くか。それだけでした。人数合わせの飲み会に誘われるほか、一緒に遊ぶ友達はいませんし、もちろん彼女ができるわけもありません。


 ずっと家にこもってゲームして、疲れたら本かマンガを読むという生活です。ただ、年齢が30代を見据えはじめるとゲームにも飽き始めて、退屈を持て余した挙句、競馬の馬券を買うとか新しいことをはじめたのですが、そのひとつが「オートバイを買う」でした。


 当時、自動車を持っていましたが、彼女はいないんだしどうせひとりで乗るわけです。同じガソリンを焚いて走る乗り物ならバイクの方が燃費がいい。就職する際に中型二輪の免許を取っているのだし、バイクでも買ってみるか。もういい大人でしたから「オートバイは不良の乗り物」という抵抗感もありませんでした。


 ホンダのCB400SFを買って乗りはじめると、思いのほか楽しかった。とにかく、バイクは「ひとりでいい」んです。クルマと違って、孤独が許される。むしろ孤独に乗ることがバイクの本質。毎日自宅に引きこもって、ひとりきりゲームしたり本を読んだりすることが好きで、それに負い目を感じていたわたしにはぴったりの乗り物だったんです。


 自宅(兵庫県)から日帰りで行ける範囲は、いろいろと出かけました。「丹後半島一周と舞鶴コース」、「高野竜神スカイラインコース」、「瀬戸大橋とフェリーでゆく讃岐うどんコース」、「近場でさくっと淡路島一周コース」、「温泉付き大山・蒜山コース」。楽しかったかなあ。バイクには自分がただのゲーヲタじゃなくなったような気分にさせてもらいました。


 だぶん、ただのゲーヲタじゃ気持ち悪がられて女の子は付き合ってくれなかっただろうし、ということは奥さんがわたしと結婚してくれたとも思えない(奥さんはオタク嫌い)のでオートバイはわたしの人生の恩人であるといえます。


 子どもができた時に「もう乗れないなあ」と思ってバイクは手放した(そのときのバイクはホンダのVFRでした)のですが、バイクに乗っていた10年余りの期間は楽しかったですね。クルマとちがって体全体で風を感じるスタイルがいい。風に乗って自由にどこまでもいけるような気がするんです。また、乗りたいなあ。


 決めた。カクヨムコンで大賞獲ったら、オートバイ買うことにします!





 ああっ。

 そうそう。三題噺のお題を募集してるんですけどリアクションがありません。ひとつめのお題は「オートバイ」なのですが、あとふたつお題をもらえるでしょうか? 

このままじゃあ、「一題噺」になってしまいます。


https://kakuyomu.jp/users/gigan_280614/news/16816700428369065872


 ま、それもいいですけど(笑)

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