第3話 プロローグofゲーム①

そして再び夏翔は目を覚ます。

また見知らぬ天井だった。しかし今度は病院のような真っ白な壁と天井ではなく、マンションや戸建てに使用されているような、壁紙が貼ってある壁と天井だった。

夏翔の心にあるのは不安と焦りだけだった。

夏翔は部屋を見渡してみると、本棚と扉そして大きなモニターがあった。

本棚には本は数冊しか入っておらず、大きな本棚である意味がないほどである。

モニターには何も写っておらず、電源も見当たらない。

扉には心臓のような模様が描かれており、不気味だった。

夏翔はドアノブに手をかけ、ゆっくり扉を開けた。

(この扉は空いてくれるなよ。)

と思いつつ、ドアノブをひねる。しかし、夏翔の願いは虚しく消えてしまった。なぜなら、ドアが開いてしまったのだ。(しょうがない。進むか。)と、自分に言い聞かせ、ドアの先へと進む。すると5人の見知らぬ人と知っている人を見つけた。

今回の状況が理解できておらず、焦っている夏翔とは違い、ここにいる7人は落ち着いて椅子に座っていた。

どうしようか悩んでいる夏翔の耳に野太い声が響く。

「おい、そろそろ座ったらどうだ?そこに立たれていたんじゃ、落ち着かねぇんだよ。」

と言い、顎で1つ空いている椅子を指す。

「そうね、その方がありがたいわ。話しやすいし、あなたのことも知れるわ。さぁ掛けてちょうだい。」

まるで貴婦人のような口調で女のひとりが声を掛けてくる。

このままではどうすることを出来ない夏翔は椅子に掛けることにした。

テーブルに目をやると、テーブルクロスが敷かれている。少し豪華なテーブルの上に似合わない無機質なモニターが1枚置かれていた。夏翔が思考を巡らせる前に自分の左にいる男が口を開いた。

「ありがとう、これで話しやすくなったね。それじゃ、自己紹介をしようか。まず僕からしよう。僕の名前は、谷村秋翔(たにむら あきと)といいます。普段は企業に務めているしがない会社員です。どうぞよろしく。

それじゃ、次は右隣の方に頼もうかな。」

そういい、右のひ弱そうな男性を見た。ひ弱そうな男性は席を立ち自己紹介を始めた。

「僕は、飯島冬喜(いいじま ふゆき)です。いつもは、小説を書いています。」

そう自己紹介が終わるとなにかを怖がるかのように椅子を引き、静かに座った。

そして、右隣の筋骨隆々な男性が声を上げた。

「じゃ、次は俺だな。俺は山里春飛(やまざと はると)だ。普段はジムでインストラクターをやってる。」

そう言い終わると、ドカっと音を立て椅子に座った。その椅子はミシッと音をたて、今にも壊れそうな音がしたが、気にしなくてもいいだろう。

「それじゃ次は私ね。私は北條秋菜(ほうじょう あきな)です。私は社長夫人として社会に貢献しているわ。どうぞよろしく。」

鼻につくような話し方に、内容だったが特に気になるようなことは無い。強いていえばここにいる誰よりも服装が派手だという事くらいだろう。

次に自己紹介を始めたのは、派手ではないものの豪華な白いスーツを着ている、40代くらいの男性だった。

「それじゃ、次は私だね。私は東秋路(ひがし あきみち)です。あまり、こういった場では言いたくないが、会社を経営している。よろしく頼む。」

そう言うと、静かに座った。

「私は、東冬華(ひがし とうか)です。今、挨拶を終えた秋道の娘です。よろしく。」

短い自己紹介だったが、夏翔はこの2人のことを知っているため、興味を示さなかった。ただ、簡潔に済ませたな。としか思っていなかった。

「私は蓮見夏美(はすみ なつみ)です。大学病院で医師として務めています。よろしくお願いします。」

そう、自己紹介をし座った。物腰やわらかそうな彼女は、誰からも好かれるタイプなんだろうと思われる。

「さて、最後は君だね。みんな自己紹介をしたんだ。君もやって貰ってもいいかな?」

秋翔が、確認だろうとは思うが、阿呆な質問を投げかけてきた。その問いに答えることはなく、夏翔は自己紹介を始めた。

「俺は蓮見夏翔(はすみ なつと)。普通の高校生だ。」

皆と同じように簡単に自己紹介をした。座ろうとした時に、春飛から質問が飛んできた。

「お前はそこの医者の女の息子か?それともたまたま同じ苗字なだけか?」

答えるこ義理はないのだが、答えなくてはいけないと思った夏翔だったが

「こんな女は知らない」

と無愛想に答えてしまった。夏翔は少し焦ったが、春飛の「へぇー、そうなのか」という、独り言なのかどうか分からない声が聞こえ安心して、椅子に座る。

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