全員キャスティングがおかしいシンデレラ Last
それから騎士様と再会することも無く、三ヶ月ほどが経った。
いつも通り私はステップガールとして、お屋敷で立派に勤めて……いたんだけど。
ある日、王城から来たという使者に何故か拘束され、馬車に詰め込まれて誘拐されてしまった。
で、これまたどうしてか私は王城の豪華な一室にご案内。
その部屋で騎士様や私の恩人と再会できたのは良かったんだけど……
「それで、どうして私が王子様の結婚相手になるって話になっちゃったんですかぁああぁあぁ!?!?」
ああ、うん。
私もちょっとオカシイなって思っていたよ?
騎士様にしては妙にロマンチックだし、王子にしては頭まで下半身で出来てるドアホウだなって思っていましたよ!!
「どうして!! 私が王妃なんかに!! そんな大変なこと、私やりたくありません!!」
「悪いが、サラ。今更になって婚約破棄をしようとしても、もう遅い」
「そんなラノベのタイトルみたいなこと言わないでください、ジーク王子!! このっ、ペテン王子っ!!」
――もうお分かりだろうか。
そう、あの騎士様がホンモノのジーク王子だったのだ。
この詐欺王子、もといジーク王子は婚約者選びに疲れ果て、影武者に婚約者候補の相手をさせていたらしいのだ。
あの女遊びに
王子を
何て理不尽!! 可哀想すぎる!!
それも、私がお世話になっている魔女様まで共犯となっていたというのだから、余計にタチが悪い!!
「魔女様もどうして王子を騎士に
「ふぁっ、ふぁっ。ワシはサラのことを気に入っとるからの。きっとジークも惚れるに違いないと思ったのじゃよ」
「はあぁあぁ!? じゃ、じゃあ最初からワザとだったんですか!?」
私が知り合いも居ないこの世界で困っていた所を、公爵家の当主であり強力な魔法使いである魔女様が助けてくれた。
どうしても聖女になんてなりたくなかった私を見かねて、ステップガールという仕事を紹介してくれた大恩人が魔女様だったのだ。
「まぁ、これで晴れてワシの養子となったんじゃし。聖女の役目も果たせば、文句を言う者は誰も居らんじゃろ」
「やっぱり私を聖女として使うつもりだった!?」
というより、聖女コキ使い計画はこの魔女様が発案だったらしい。
だから偶然私を助けたんじゃなくって、自分が加担していた計画で迷惑をかけたから世話をしてくれたっていうのが事の真相だったのだ。
なんだよもう、全部この人が悪いんじゃないか!!
……でも国を代表する貴族として、魔女様もやはり瘴気は放ってはおけないらしい。
私を王妃とすれば、国のトップもそう雑に扱わないだろうから、と魔女様は気を遣ってくれたみたいだけど……。
「瘴気を払うのは各地に居る貴族の視察ついでにやればえぇ。そもそも、サラはジークが嫌いかえ?」
「えっ。サラ、俺のこと嫌いなの……?」
うっ、そう言われると私も答えづらいものがあるんですけど……。
「嫌いじゃ、ないですけど……でも、もっと段階を踏んで欲しかったっていうか……」
たしかに、付き合うならこういう人がいいなーとか、筋肉触らせてくれないかなーとかは思ったよ?
でも普通なら告白して、交際を重ねてからプロポーズとかするじゃない?
「……ってあれ? どうして二人とも、顔を見合わせているの??」
「サラ……まさかお主……」
「そんな……サラ、もしかして異世界では婚約の方法が違うのか!?」
「……えっ?」
「サラ、お主はジークから四葉のピアスを受け取ったじゃろ? アレを受け取るのは婚約を受けるのと同義なのじゃよ……」
「ええええっ!?」
アレは婚約指輪ならぬ、婚約ピアスだったってこと?
知らなかったとはいえ、私はそれを受け取っちゃったワケで……。
「ごめん、サラ。俺はただ、キミに『おかえりなさい』って言ってもらえるような関係になりたかっただけなんだ」
怒られた犬のようにシュン、としながら私の顔を
やめてよ、別に貴方にそんな顔をさせたかったんじゃなくって、ただ私の心の準備が……。
「す、末永くよろしくお願いします……」
こうして私は何だかんだ言って、また忙しい人生を歩むことになってしまった。
聖女として国中を回って瘴気を払ったり、王妃として政務を手伝ったり。
そんな生活を数年間続けて、ある程度のことは落ち着いた。
だから、聖女の役目は一旦終わり。
なぜなら、お腹の中に彼との大事な赤ちゃんがいるから。
今の私は王妃でも聖女としてでもなく、彼だけのステップガールとして王城の入り口で送り迎えをする毎日。
思っていた人生とはかなり違っちゃったけれど、私はとっても幸せです。
灰被りステップガール 聖女が嫌でメイドを始めたら屋敷を訪れた騎士様に求愛されてしまいました。婚約破棄したいけど……もう遅い? ぽんぽこ@書籍発売中!! @tanuki_no_hara
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