全員キャスティングがおかしいシンデレラ 3
王子様が来ると言われてから数時間後、王家の紋章がついた立派な馬車がやって来た。
中からは驚くほどの金髪のイケメンが降りてきて、屋敷の中へ
私はそんな彼にホエ~と見惚れつつも、ちゃんとステップガールとしてお出迎えをした。
顔が良いだけなら前世でも推しが居たし、そういう見た目だけな相手にはガチ恋しない勢なんだよね、私。
そのあと王子様が帰る時にまたお見送りをしなきゃなんで、それまでずっと待機だ。
「ねぇ、騎士様はどう思います~?」
「ん? 何のことだ?」
私は庭の石畳に座り、花壇を
その騎士様は短く刈られた銀髪をガリガリと
彼は王子様の護衛。だけど屋敷の中へまでは同行せずに、私と一緒にここでサボっていた。
「何って、王子様の話ですよ。聞いてなかったんですか!?」
「んぁー、わりぃ。天気が良くてぼーっとしてたわ」
「まったく……相変わらずですわね、騎士様は」
この騎士様は王子様が来る度に会う、私の顔なじみ。
庭先でフラフラとしていた私に話し掛けてきたのがキッカケで、それからこうして一緒に時間を潰すようになった。
最初の頃は私も彼に「護衛なのに、そんな緩くていいの?」と聞いたんだけどね。王子様の護衛なんて、とっても重要な任務だろうし。
そうしたら「四六時中も気を張っているとさ、コッチも疲れるんだよ」だって。
それでいいのか、騎士様……と思ったけど、どうやら王子様の許可はちゃんと取っているらしい。
王子様にとっちゃ令嬢とイチャイチャしているところを邪魔するな、ってだけかもしれないけれど。
それに私たちは不真面目なようでも、ちゃんと仕事はしている。
あくまでも仕事でこの場に居るのであって、それ以上はお互いに踏み込まないようにしていた。
だから私は彼の名前も知らないし、彼も私のことを知らない。
恋人や結婚しているのかどうかさえ分からない。
そんな騎士様も、一般的に見たら中々のイケメンさんだ。だからそういう相手がいても、なんらおかしくは無い。
そりゃあ王子様ほどのオーラは感じられないし、なんだか性格もぶっきらぼうだけど。
その代わり一緒に居てあまり気を遣わない分、私は断然こっちの方が好みかな?
「いったいどれだけの嫁候補が居るのかは知りませんけど、節操無さすぎません? 女だっていつまでも若いわけじゃないんですから、あんまり期待だけさせるのも可哀想じゃないですか~」
あの子の事は好きにはなれない。
でも同じ女としてチャラい男に
王子はさっさと正妃と側妃を決めて、国の為の仕事をしっかりとしてくれ。
国のトップが色ボケして、組織が丸ごと総崩れ~なんて私は嫌だからね。
「ふっ、ははは!! た、たしかにな!! キミの言う通りではある。間違いない!!」
私の歯に衣着せぬ物言いがツボに入ったのか、騎士様は大声を上げて笑っている。
自分の上司を
いや、相手が私だから気を遣ってくれているだけかも?
「この国の王子に対してそんな不敬なことを言う奴なんて、そうそう居ないぞ?」
「だってしょうがないじゃないですか。というより、居ないんです? そういうキチンと
そう言うと、騎士様は「ふむ、居ないことは無いな」と急に真面目な表情になった。
「母上と乳母代わりだった魔女様は厳しく
「お尻っ……? そう、なんですか??」
騎士様が言ったことは、私にとっては何となく意外だった。
私がこのステップガールを始めてから、もう一年ぐらいが経つ。その間に他の屋敷でも今日みたいな光景を何度も見ていた。
あの王子ってどの令嬢に対してもベタベタとしていたし、普段から女遊びをしているような人だと思っていたんだけど。
そのくせ、メイドたちには興味が無いのか挨拶しても知らんぷり。ぶっちゃけ、私にとってはあの王子にはあんまり良いイメージが無いのだ。
「うーん……」
ちゃんと叱ってくれる人がいるなら、もう少し紳士的な態度をすると思うんだけどなぁ。
それに騎士様が言っていた魔女って、もしかしたら私が良く知っている人かもしれない。
あの人がお目付け役だったら、絶対にあんなチャランポランな性格にはならないはず。
――ま、いっか。王子様なんて雲の上の人、私には関係のない話だしね!!
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