悩み
私は、空先輩の所に行って、将来行ってみたいところとか、近所のおばあちゃんの話とか、他愛もない会話をしている。私は、この時間があるから、悩みが尽きない毎日でも楽しく生活できている。
「そーら!ここにいたのかぁ」
この部屋のドアをガチャっと開けて、入ってきたのは、180cmぐらいあるセンター分けイマドキ男子だった。
「お!大輝!どうしたん?」
大輝と空先輩に呼ばれたその人は、私に気づくことなく、空先輩と話している。
「空に勉強教えてほしいんだけど〜!松岡に今回赤点だったら、単位落とすぞって落とされてさぁ」
「いいけど、放課後じゃだめ?昼休みは、ちょっと空いてないから」
空先輩の言葉に嬉しくなった。別に私といたい訳では無いのかもしれないけど、優先してくれて、先輩もこの時間がすきなんだって知れたから。でも、この友達、すごい必死だし、今日は帰ろ。
「空先輩、私、戻りますね!」
やっと私に気づいたのか、驚いたようにこっちをふりかえった。
「え?誰?」
「あ、2年生の星ちゃん。まぁ、僕のお客さん。で、この大きい男が大輝。僕の友達」
「え?ちょっとまて!聞いていないんだけど!」
大輝先輩は、私のことを睨むように見てきた。なんで?え?なんかした私?
「こんなかわいい空に触ったりしてないよね?」
180cmイケメン高校生にまさかのことを聞かれて、この状況が理解できなかった。
「あ!違うよ!そういう事じゃなくて、空って体弱いから」
「大輝、ほんとに辞めろってそういうの笑!僕の親ですか?昔から、僕が女の子と喋ったりしてたら、絶対来るんだよね笑」
「幼なじみなんですか?」
「うん。空と俺は、小学校から一緒」
こんなに心配してくれる友だちがいたんだ。正直、空先輩ってあんまり生活感がないから、ほんとに人間なのか疑っていたところがある笑。
「腐れ縁ってやつなんだよね」
「はぁ?お前が俺についてきてるだけだろ!」
「そうでした!そうでした!ごめんね、星ちゃん、早く大輝出てけよ!星ちゃん困ってんじゃん!」
そう言って大輝先輩を追い出そうとした。空先輩のたっている姿って初めて見たかも。いつもベンチの上で座っていたから。 制服を着ていてもわかるぐらい、細くて、大きな大輝先輩と比べたら、弟みたいな感じがする。ずっと思っているのだが、なんか先輩からは、儚い空気が漂っている。なぜなのか。今まで出会ったことの無い空気感。
「そらー!友達見捨てんなよー!」
と追い出される直前、大輝先輩は、また睨むようにこっちを見た。なんでだろう?正直、怖かった。なんか悪いことしたかな?ただ目付きが悪い先輩だと思い、私は考えないことにした。
「ごめんね!急にー!!」
「いや、大丈夫です。本当に仲良しなんですね」
「うん。まぁ、頼りにはしてるよね」
「小学校から一緒ってすごいですねー!空先輩って中学の時とかどんな感じだったんですか?」
聞くんじゃなかった。空先輩の瞳が新月の輝きになった瞬間、そう思った。
「うーん。普通かなぁ。武勇伝とかないもん笑。逆に、星ちゃんは?」
「私は、中学の頃、弓道部だったんですけど、.....」
私は、必死に言葉を繋いだ。ちょっとの沈黙で、多分、先輩の心がよごれる気がしたから。それだけは、嫌だ。私にとって先輩は、失いたくない存在だ。やっと気づけた。
家に帰って、着替えて、ベットに寝転がった。空先輩のこと、もっと知りたいと思う。だけど、聞けない。踏み込めない溝が私と空先輩を隔てている。夕食を食べてても、お風呂に入ってても、勉強してても、先輩のことしか頭に浮かんでこない。気分を帰るために、好きな歌を聞いた。いつも見ないバラエティも、見た。ずっと本棚に読まずに閉まっていた本も読んだ。でも、全て、頭に入ってこない。眠れない夜に限って、満月の日だった。
次の日、私は寝不足もあって、体がだるかった。花と恋といつも通り喋っていでも、やはり先輩のことが気になる。
「ねぇ、星?なんか体調悪い?」
「朝から、ずっと元気なさそうだよね」
2人が聞いてくれて、いつもだったら、大丈夫って言ってたけど、本当に大丈夫じゃない時って、誰かに聞いてもらいたいんだって思うんだって人生初めて、気づいた。私は、今までの空先輩とのことを全て話した。悩み相談してもらったことや、喋ったこととか。
「星ちゃん、それは先輩のこと、好きなんじゃない?」
「それしかないでしょ笑!どんだけピュアなの!」
2人が顔を見合わせて、笑っていた。
「思い伝えてみたら?」
「うん!そうだよー!」
2人は、簡単に言うが、恋愛経験値レベル1のチュートリアルで登場するような弱小キャラの私にとってそんな簡単には、出来ない。
「でも...。」
私は、言葉が出なかった。付き合えたら、楽しんだろうとは、思う。でも失敗したら、先輩とのあの時間が無くなる。そんなの絶対に嫌だ。
私は、先輩にどうゆう顔で合えばいいのか分からなくて、1ヶ月、空先輩の所に行かなかった。行かなければ行かないほど、あの時間が恋しくなる。二人きりの旧部室。あの時間を自分から遠ざけている。失いたくないとか言って、自分からあの時間を無くしている自分にも腹が立つ。もう冬に入ろうとしている。
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