第7話

「それは、見てみたいな。」

「ちなみに、その人は死にました。役者である自分の美しい顔を不変にするために」

狂ってると言ってしまえばそこまでだが俺はどこかその話に引かれた。

「素晴らしいな。とても。」

「皇太子様は否定なさらないんですね。自分で自分を殺めることを」

「神の教えに背いてることは分かっているが、なんというか、俺は嫌いになれないなその人を。俺は異端なのだろうか。バレたらまずいから黙っててくれ。」

「良いですけど。私自身神を信じてないので。二人の内緒です。」

ミリーは俺に向かってニコッと笑う。俺はそれを見ると心臓がギュッとなった。

「ああ。君の姉に君は男性不信と聞いたが俺の前でとても流暢に喋るよね。」

俺は急に何を言ってるんだろう。質問の仕方からして特別だからと言って欲しいんだろうけど。自分は、自分は、自分の思ってる事を出しては行けない気がした。

「ああ、あれ嘘です。家族の前でそういう風に振舞ってるだけです。男性不信では、ないです。それに、そうだとしたら街で話を聞いたり頼み事をされるなんて有り得ませんしね。なんなら鍛冶屋や土木作業の見学をしたこともありまよ。」

言われてみれば確かにそうだ。なんで、気にしなかったんだろうか。

「なんで、そんな事してるんだ?」

「うーん。まぁ、社交関係の行事に出たくないのが大前提ですけど後は父親に後悔を強くさせるためです」

親にいじめられていたとクロエは言っていたがどうやらそれの話のように感じた。

「自分がやりすぎたせいで娘はこうなったって思ってるみたいです。馬鹿ですよね。自分でやっといて公で色々言われて一人で気に病んで、確かに拷問は辛かったですけど本があればどうにでもなると思ってたんで我慢しました。まぁ、ざまぁって言葉が一番似合うかな。」

なんてミリーは言う。その後も色々話した。彼女は本当になんでも詳しくて話してて飽きなかった。そうしているとドアをノックする音がする。

「どうぞ」

とミリーが言うと。クロエが入ってくる。

「すいませんミリーがモデルなんて頼んで」

「いえ、好きでやってるので。」

「そうですか。そろそろ父が帰ってきます。帰ってこない間にお帰りください」

「わかった。ミリー、また時間が空いたら来るよ。」

「分かりました。お待ちしてますね。あ、お姉様今度は来る時教えてね。大丈夫この部屋から出ないから。」

そして、私は週に一回ミリーの元に訪れて絵を描いて貰った。クロエやエルマが両親のいない日を作ってそれを報告してくれてとても感謝している。一ヶ月経つ頃には着色に入っていた。白黒の自分が凛々しく鮮やかに彩られていくのは興奮した。そして、ミリーとはとても打ち解けた。ブルーノ程では無いものの趣味を語り合う中になっていた。

「多分次回で終わりそうです」

ミリーは突然そう言う。

「そ、そうか。出来たらその絵を貰っていいか?」

「良いですよ。最後の私の作品です。大切にしてくださいね。」

嬉しく思っていた俺にはミリーの言葉が引っかかった。

「最後?」

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