第4話

「…質問してもいいですか」

一人で考えているとクロエは声を上げた。

「なんだ?」

「なんで、ミリーのことをそんなに知りたがるんですか?我が家自体に今まで見向きもしなかったのに。」

最後の言葉には棘が含まれている気がした。

「そんなことは無い。君たちには元々期待しているよ。確かにミリーのことについては興味本心だよ。嫁候補にね。最近、身近なやつによく言われるようになってそろそろ考えないとと思ってね。」

「別にミリーじゃなくてもいいのでは?あなたの事を思う人は上中下関係なくいるでしょう?」

「俺はある程度頭のいい人じゃないと思っているよ。女性の債務も他の貴族より多いしな。」

「なら、私でもいいんじゃないですか?自分で言うのもなんですが学業は良い成績を常に収めております。エルマもそれは同じです。」

なるほど、確かにこの人たちは頭が良い。アイルも含めてだ。彼らを俺は信頼している。しかしだ。

「ああ、言い方を変えよう。賢くて俺の大好きな音楽を心底愛してくれる人だ。これが俺の候補条件。」

そう言うとクロエはクスッと笑う。

「そしたら、私では向きませんわ。クラシックは飽きますから。いいでしょう。まずはカマをかけるようなことをしてすみません。ミリーに私から相談してみます。状況がわかり次第お手紙を送ります。」

「手紙が帰ってくる確証は?」

もう、ミリーを探させるのに探偵を雇って何人が疾走したことか。

「そうですね。ほぼ確実です。貴方様の成人式までにはお送りしましょう。成人式までにもし、手紙が来なかったら私たち一家を殺してくれて構いませんわ。」

「……君はなんでそんな言葉を簡単に言えるんだい?」

「こうしないと信じてくれないと思って。それに元々王族のお願いを断れるほど私は勇敢に育っていません。」

「わかった。信じてみよう。」

そして、手紙が届いたのは一週間後だった。クラシックのコンサートに連れていくのでその時に偶然を装って接触してくれとの事。案の定と言うべきかミリーから俺と会うのは断られたらしい。例え、姉や兄が付いていても嫌らしい。俺は指定されたコンサート会場に行くと二階のVIPに通される。これじゃお忍びの意味が無いだろう。ミリーが席をとったのは1階の市民席の右から七番目、前から十四番目の所らしい。席から双眼鏡で覗くとその席は既に埋まっていた。姉と同じく真っ直ぐとした長い金色の髪に澄んだ青い瞳。ただ、貴族なのかと言われると疑問符を浮かべてしまう。着古したであろう服に髪の毛には何も手間をかけていないようだ。横にいるミリーと話しているのは多分クロエだ。しかし、二人が一緒だとやっぱり見た目が違うな。なんなら反対横との方が釣り合うだろう。劇の内容はよくあるラブロマンスだった。それに感情的に寄り添うオーケストラに俺は耳を傾けた。場面にあった音運びはとても素晴らしいと思った。劇が終わると俺は下に降りて二人を待ち伏せた。そして、出てきたところを見計らって会う。

「ああ、君はクローゼ家の令嬢じゃないか。久しぶりだな。」

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