第3話

「父と母を同席させないで欲しいのですが」

「は?」

予想外の返答に驚いて声が出てしまう。

「もう一度申し上げます。父と母を私と貴方様の話し合いに入れないでいただきたいのです。なぜなら、この二人はミリーの話をするにあたって絶対にノイズになるからです。」

俺の聞こえていた内容な間違えないようだ。何か、俺を陥れる作戦があるのだろうか。でも、今は考えてもしょうがないか。それにそのくらいなら大丈夫だろ。

「ああ、わかった。すまないが席を外して欲しい」

取りあえず要望を受け入れることにした。するとクローゼ夫妻は娘になにか言いたそうにしながらも去っていった。

「そしたら、座って話してくれ」

俺の言葉を聞いてクロエはさっき二人が座っていたところに失礼しますと座る。

「じゃぁ、頼むよ。」

「いいですよ。何から聞きたいですか。」

「何から聞きたい……か。まずは彼女の人物像を聞きたい」

だいたいどういう人なのかでその人の心理が読めるというものだ。それに、ブルーノのやつや情報屋が法螺を吹いてないだろうということも知りたい。

「わかりました。あの子は好奇心の塊みたいな子で何にでも興味を向けます。最近は落ち着きましたけど、昔は街の道にあるもの全てに時間をかけて見てました。性格としては難だらけですね。人もしかり、食べものもしかり、何かと好き嫌いが激しいです。好きな物はとことん調べるし嫌いなものは見向きもしないし近づけもしない。あと、思ったことは良いこと悪いことどちらも言ってしまう。まぁ、よく言えば裏表がないですが、社交会やパーティーに出すには向かないのです。それに本人もあまり行きたがらないので」

なんともおかしい性格だ。身近であげるなら皇室の研究者に近いな。なるほど、だからパーティーや式典、呼び出しにも来ないのか。しかし、それではクローゼ家に悪い噂が広がるだろうに。でも俺が知らなかったくらいだから、末っ子が来なくても別にそれでもやっていけてたのか。

「なるほど。多少の無礼は許そう。だから、少しでいいから会わせてくれないか。会ってみたいんだ。」

「……それは無理です」

「何故?」

「あの子は男性が怖いのです。知ってるかも知れませんがお父様もお母様も昔からあんな感じなんです。イレギュラーの思考を持つミリーが嫌いなんです。それで昔から私や兄さん、エルマの知らないところで虐めてたみたいで。」

だから、俺にちゃんと話したがらないのか。死ぬかもしれないという恐怖より男性と会う方が恐ろしいらしいのか。そして、クロエも俺に話すにあたってあの二人を遠ざけた。理屈は通っている。

「なる程な。」

行き詰まってしまった。ブルーノのやつに相談してみようかそれとも…

「…質問してもいいですか」

一人で考えているとクロエは声を上げた。

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