第2話

クローゼ家の4人目を呼んだのは数ヶ月後だ。仕事があまりにも立て込んでしまい招待を出すのが送れた。

まぁ、それだけでなく探偵を送り込んだのだが、それもまた帰ってくるのが遅かった。し、何人か逃げた。帰ってきた情報屋の話によるとなかなか情報が集まらなかったと言われた。しかし、貴族ではなく街の市民に聞いた途端情報が沢山入ったとも聞いた。何週間も無収穫だったのが嘘のようだと。

彼女の名前はミリーと言うらしい。多趣味でほとんど自室に隠りっきりで食事や頼み事以外で家族と顔すら合わせないらしい。ただ、自分の好きな物の情報集めに月に一、二回ほど知らぬ間に街に一人で出かけているらしい。場所はほとんどが図書館かその専門のお店。その道中で街の人に知識を与え報酬としてその人しか知りえない知識を貰うということを行っているらしい。それがわかったのが先週、俺の招待状にノーと帰ってきたのが今日か。普通に俺の招待状を理ったのはこいつが初めてだ。よほど死にたいようだ。そんなやつこちらから願い下げだ。

「……」

しかし、どんなやつかは気になる。貴族を捨て街を愛した女。こうなったら自分で出向くか。俺は今日手紙を送り直す。明日には手紙が届いてるだろう。今週の仕事を早く終わらせて今週末に会えるよう。会うだけだ。

そして約束の日になった。俺は今、馬車でクローゼ家に向かっている。クローゼ家の邸宅に着くと、その家の主のカールさんとその妻であるフレデリーカさんが出迎えてくれる。

「今日はようこそいらっしゃいました。」

「ああ」

茶の間に通されると例の四人目に会えるのかと思いきや自分の双子姉妹や長子の話ばかり。

「あの、すまないけど、俺は今日ミリーという子の話を聞きに来たんだ。」

俺は夫妻にそう伝えると二人は分かりやすく身を強ばらせる。やっぱり隠そうとしているのだろう。

「すいませんスタンリー様。今あの子は出かけていまして……」

夫人は言葉を選びながら喋る。そして、言葉が曖昧に途切れると同時に客間の扉をノックする音が聞こえる。

「どうぞ入れてください」

と俺は心情を読み取られないように笑顔で言うと、恐る恐るクローゼ氏は入れと言う。すると、クローゼ家の長女のクロエが入ってくる。長い髪を美しく結い上げ、落ち着いた色の服に沿う綺麗な顔に、真っ直ぐ人を見すえようとする目。クローゼ家の子供の好きなところはこの自分の意をいつでも示せるというような希望の顔をしている所だ。貴婦人や王族の機嫌取りだけが取り柄の父親にいつも自信の無い馬鹿な母親。全く誰に似たんだろうか。

「スタンリー様。ようこそいらっしゃいました。お話を遮断してしまい申し訳ありません」

と彼女は俺に頭を下げる

「いや、大丈夫だ。頭を上げてくれ」

「要件はだいたい聞こえていたのでわかります。ミリーの事ですよね。それでしたら私が話します。」

「!?何言ってるのクロエ」

「そうだぞ」

「お父様、お母様。どうするかを決めるのはスタンリー様です。それに話していいかどうかは兄さんやミリー、エルマには確認をとっています。」

その言葉を聞き親は黙る。全く。これでは、どっちが上か分からないな。

「クロエだったか。是非聞かせてくれ」

「はい。少し相談があるのですが」

こういう時の相談は大概は金だ。ああ、それなら、妹を売る価値があるな。頭の良いここの兄妹ならそう考えるかもな。しかし、そのミリーというのが気になる。限度はあれど金ならはたこうか。それか、宝石かな。宝石なら大体のものは買えるだろう。後者なら可愛らしいものだ。

「父と母を同席させないで欲しいのですが」

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