第2話 小説の世界に転生…?
ㅤそれから1年と10か月がたった。
さて、どこから状況を説明しようか――
ㅤまず、俺は赤ちゃんに異世界転生した。
それを認めるのには時間がかかった。
なんせここは現実。異世界転生をするはずがないのだ。
でも、どうやら認めざる負えないようだ。
そういや、それが分かった時から、興奮して何日も眠れなかったな。
ㅤまさか自分が異世界に来れるなんて、夢にも思わなかったから。
「ディザー君。お口開けて! あ~ん」
「やだー!」
「ディザー。しっかり食べないと、父さん見たいに大きくなれないぞ~?」
そういって。この男、グレイスは俺に無い筋肉を見せつけてくる。
ディザーという名を与えられた俺は、20代前半ぐらいの猫耳のカップルに育てられた。
二人とも良い猫だにゃん。
なんて言ったって、実の親がいない俺を拾って育ててくれているのだから。
それと、俺にご飯を食べさせてくれている美女はミリエットだ。
ㅤつまり、この二人は巨人では無かったのだ。
ㅤ俺が湖の上のカゴに寝ていたから、巨人だと思っただけらしい。
ちなみに、俺は赤ちゃんのふりをしている。
ベラベラ喋ると怖がられて捨てられるかもしれないからな。
ㅤ――さて、ここから実に奇妙な話になる。
ㅤ窓から外を除くと、自然に支配された街が見える。
ㅤ昔はきっと栄えてたであろう街が。
ㅤ見たこともないような大きな木が生え、猫族が数匹歩いている。
ㅤこのなんとも言えない不思議な風景。
そして俺を育ててくれているこの猫耳カップルの顔、名前。
……アンブルストーリーそのものなのだ。
つまり、この世界は小説の世界という仮説が立てられる。
しかし俺がこの猫耳カップルの実の子供では無いなど、設定が多少違うこともあるから、今は断定できない――
ある日、この世界のことをもっと知りたいと思った俺は、グレイスに頼みごとをした。
「パパ、外に出たいー!」
「お、いいぞ。だが怖い動物がいるかもしれないから、父ちゃんの後ろに隠れるんだぞ?」
「はーい!」
グレイスは剣を持ってきた。
きっと、怖い動物というのはきっと魔物のことだろう。
するとミリエットは指を口元で合わせて話始めた。
「あら、お散歩に行くのですか? なら私も行きたいなー、なんて」
「ハッハッハ、じゃあ今日は家族全員でデートだな!」
(何言ってんだコイツ)
というわけで、家族全員で家の外に出た。
初めに確認したのは、やはり自分の家だ。
大きな木に、窓がいくつかついており、オシャレな家だった。
あたり周辺の風景は、窓から見た通り。
そして日の明かりは、葉っぱによって遮られて、少ししか森林の中に入ってきていなかった。
「今日もいい天気だ。さぁ行くぞ!」
数分歩いていると、ベンチや階段。様々な家や教会があった。
もちろん、全て自然に支配されている。
向こうには、あり得ないぐらい大きな滝が見ていた。
蝶々や、見たこともない美しい動物もいる。
俺は興奮して、走り出す。
(うわぁ、すげぇ!!)
「どうやら、釘付けのようですね」
「あぁ、そうだな」
二人とも、優しい目で俺のことを見ていた。
俺は一つ、質問をしてみることにした。
「パパー、この家たちは、誰が作ったの?」
「いい質問だ。この家は、昔、"人間"が作ったんだ。見捨てられたこの場所を、今俺達が拠点にしている」
一歳がする質問ではないな。
我ながらそう思った。
グレイスは、子供の俺に分かりやすく説明してくれた。
「へー、面白い!」
「そうだろ? こういうのを歴史っていうんだ。」
この風景と、歴史を聞いて、俺は確信した。
間違いない。この世界は小説の世界だ。
俺はアンブルストーリーの世界に異世界転生したんだ――
(よっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!!)
「グァルルルルル」
俺が結論を出したその刹那、何かの鳴き声がどこからか聞こえた。
「え?」
「ディザー、ミリエット!! 俺の後ろに下がれ」
グレイスがそう叫び、鋭い目つきになる。
ミリエットは俺のことを守るように強く抱いた。
「この声は、まさか魔獣ですか?」
「いや、多分ただの魔物さ」
だ、大丈夫か?
グレイスは、魔物と戦えるのか……??
正直、ものすごく心配だ。
(どっから来る……?)
周りを必死に見渡すと、ある家の上に狼のような見た目の怪物が三匹乗っていた。
俺は叫んだ。
「家の上!!」
そう叫ぶと、グレイスは上をパッと確認し。呟いた。
「ガディラウフルじゃねぇか」
ガディラウルフ。それはあの狼の名前だ。
魔物は家から飛び降り、牙をこちらに向け、涎を垂らしている。
こ、こええ。人の肉ってそんなに美味しいの?
俺は思わず目をつぶる。
「怖い?」
「うん……」
「ふふ、大丈夫よ。パパは強いんだから」
ミリエットの表情は、自身満々だった。
「グワァウゥゥゥゥ!!」
一匹のウルフがグレイスの方へ向かって全速力で近づく。
ウフルが飛びかかって瞬間、グレイスはウルフの口に向かって剣を横に振った。
そのまま数メートル吹っ飛び、ウフルは血を流しながら倒れた。
(す、すげぇぇ!!)
しかし、僅かでも剣を振るのを遅れていたら、ウルフに美味しくいただかれていた。
残り二匹のウルフも続いてこちらに向かってきた。
先ほどのようにウルフを倒すのかと思いきや、今度はグレイスの身体が薄く輝き始めた。
――この世界が本当に"あの小説の世界"なのだとしたら。
この後に、グレイスのスキルが発動するだろう。
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