節約妻の空回り

 作中でスマホのゲームアプリに夢中で妊活に協力的でない夫の姿を描いた。


 「一緒にいて居心地の良い妻っていうのはね、あれこれうるさく言わない妻ね。夫のために一生懸命に何かをしてくれる妻も素敵だけどね、長い人生一緒にいると『こういうことはやらないで欲しいな』と伝えたことを守ってくれる女性のほうが一枚上手だったりする。例えば美都さんのご主人はゲームに夢中。たまには『ゲームより私に構って欲しいわ』って可愛く言うのは大いに有効なんだけど、夢中になってやっていることを毎回途中でセーブさせられると相手はイヤになる。」


 「『ゲームをやめて』って言ったら一時的には我慢してやめてくれるかもしれない。でも我慢は長くは続かないわ。我慢してゲームをやめるんじゃなくて、ゲームよりも妻とエッチしたいってところまで持っていくほうが長持ちする。でもそれには努力が必要よ。」


(『頑張り屋さんの落とし穴』より)


 ある妊活主婦が高額治療にトライし、なかなか授からない焦燥感にかられ、家で節約を熱心に心掛けるようになった。


 治療にお金をかけるために無駄遣いを少しでも省きたい。


 それが彼女の狙いだった。


 彼女は夫がうっかり電気をつけっぱなしにすると「ちゃんと消しといてね」と一言、水道の水を一気に出すと「もったいないから少しずつにして」、何かあるたびにガミガミ。


 だんだん嫌気がさしてきた夫はキャバクラに通い始めるようになる。


 家で偉そうにいちいち細かく注意を飛ばす妻よりも、たとえお金を払ってのドライな関係とはいえ「いらっしゃいませ」とにっこり笑って自分の話を聞いてくれる若いキャバ嬢のほうがよっぽど一緒にいて居心地がいい。


 彼女の知らぬ間に夫は貯金を何十万使い込んでいた。

 

 これは一般的にみると、キャバクラでお金を使い込んだ夫が悪いのかもしれない。

 

 でも、そもそも夫がキャバクラに走った根本的な原因は何なのか? 


 そこを突き詰めて考えていくと、家でくつろげないくらい口うるさい妻の言動だった。


 電気を1時間つけっぱなしにしていたり、少しお水を多く出したくらいではキャバクラ通いのように数十万の出費にはならないだろう。


 奥さんは子供が欲しくて一生懸命な思いで妊活をしている。


 その思いはけっして悪いことではない。


 でもパートナーの気持ちを置き去りにして一人で頑張り過ぎると、それが裏目に出ることがある。


 夫婦関係を円満に保つことが無駄な出費を出さない一番の方法なのだとこの話を聞いて思ったのだった。

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