第1話 教員の「未必の故意」と「認識ある過失」

「未必の故意」と「認識ある過失」。


 これらは教科書的には、典型的には、自動車による死傷事故(あおり事故など)を扱う際に必要とされる、法的責任を問われるべき事象を招いた本人の法的責任を問うための法的概念である。近時は某高等国民(?)氏による池袋あたりでの認知症的操作ミスでも争われているところであろう。


 話をわかりやすくするために、ここでは眼前の「旭川女子中学生いじめ問題」の成人教員に限ろう(✧1)。


 彼ら成人教員に責任を問える法的概念には、殺人等の刑法犯として故意と認めうる「未必の故意」と、実質的には民事の話となるであろう「認識ある過失」と、それらを問えない場合の行政法上の立法上の問題とが考えられよう。


 仮に同校の教員に、生徒たちの犯罪行為を助長した何らかの『作為』、又は、生命の危険につながる重大な事実を知っていながら放置した『不作為』が刑事訴訟の場で事実認定されたならば、彼らは刑法犯に問われることとなる。このような事態に至った場合、道の配下にある教育組織の上の方も含め、組織に何のお咎めなしとはいかないであろう。


 けれども、「未必の故意」を同校の教員に問う法的なハードルは遺憾ながら高い。(言っては悪いが)弁護士としての成績が高くはないかもしれない教員側弁護士でも容易に弁護仕切ることを可能にしてしまうだけのハードルがそこにはある(✧2)。

※オレオレ詐欺事案などで、主観的な『騙す意志』の事実認定がしばしば難しいのと同様の話。


 となると、まずは「認識ある過失」の責を問うとして、教員たちを民事で損害賠償責任を求めれることにすれば良いのでは、という話になるだろう。けれども、正直、民事だけでは、教育委員会という組織にまで踏み込んだ改革は難しいと思われる。

 むろん、一般論として、未成年の多数の個人が、未成年の一を蹂躙しその人権を害することは許されない。教員免許を取得している者で知識としてこれを知らない者はいない。

 他方で、(社会的認識としては)多忙な地方公務員ながら、それを全うすれば社会的にも年金生活的には安泰な身であるならばの、「保身」は(他の社会人同様に)すりこまれていることだろう。深刻ないじめが起きているという事実を前に、法的には悪意(=事情を知っていること)あると言いきれない不作為、すなわち、事なかれ主義がこのままでは蔓延し続けるのではないかと僕は危惧する。



 しかし、平成の世が終わっても繰り替えられる残念な事件に誰かが突破口を開かねばならない。僕の私見では、それを最終的に成し遂げるのはアクセス数頼みのYoutuberの力のみではない(彼らの活動は大いに評価するにとても)。


 地方公務員(もしくは文科省の助成金頼みの私学)の教員に一番響くのは、学校でおきた深刻ないじめについて、学校の責任にも言及しつつ、教員の刑事責任を認める確定判決である。


 平成・令和の世を通じ、『ニュースになる・ならない』幾多のいじめは生じていることと思う。第一に検察の積極的なアクションに期待したい。第二に、そうした検察の動きを支援する世論の盛り上がりに期待したい。

 最後に、現行法上、イジメを認識しながら放置した教員たちに刑事責任を問うことが極めて難しいようであれば、特別法の制定を視野に入れた議論が国民と国会とで盛り上がることを期待したい。


 かの、あおり運転問題では、道路交通法が改正され、「妨害運転罪」が新設され、厳罰化されている。深刻なイジメ問題について、学校と教員の法的責任を問う法改正も可能であると僕は信じる。

https://smartdrive-fleet.jp/useful-info/traffic-law-of-revision-road


(✧1) いじめをした当事者については、未成年者の犯罪行為に対する法改正も絡む問題であり、遺憾ながら他稿に譲る。


(✧2) 教員を担任といっても教頭と言っても校長といっても良い。彼らがいじめ被害者を真に死にいらたしめても構わないという情報を認識しうる立場にいて、かつ、そうであっても構わないと思い、なおかつ個人の快楽などのため、そのイジメを容認し促進したような客観的証拠が法定で立証されて、はじめて、刑法犯としての確定判決が得られるといういったあたりが、僕の感覚。なかなかに検察側の立証は辛そう。。

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