災guys

ロイク

第1話 嵐の静けさ

G県M市

夏も真っ盛り、新芽の香りとともに灼熱の太陽が雲から顔を出したある朝のこと。

空我くが家では


「ライ!早く起きなさい!学校おくれるよ、全く高校二年生にもなって親に起こしてもらうなんてなさけなくないの!?」


夏の暑さに負けないほどの母の大声がライの耳から入ってきた


「わかったよ!ふぅ…メンドクサ…」


学校は嫌いじゃないが好きでもない、でも学校に行きたくないと思ってしまうのはこの早起きと、眠い頭で40分間汗だくになりながら田んぼだらけの凸凹道を自転車で漕いでいかなければいけないことだろう。


慌てて身支度を済ませていたライはふとテレビに目をやった。そこにはいつも通り天気予報が流れていた。


「今日は一日中晴れの予報ですが一部の地域では雨が降る恐れがありますので、傘を持っておくと良いでしょう」


「もう父さんはとっくに家を出たわよ学校間に合うの?」


「あぁ…行ってきます」


そういうと、暑さで憂鬱になる気持ちを押し殺し、ペダルに足を運んだ。


「あっ、チャリの空気入れんの忘れた…」

(一日の始まりにはもっといいことを見つけたいのになぁ)



そんな大してつまらないことを考えながら学校に着いた。


教室に入り、涼しさを求めるも、先生が教室に来るまでエアコンをつけれないというクソルールのせいでクラスの中は似たような境遇をするものばかりで、心なしか、外よりも暑い気がした。


「おいおいライ、まだ清々しい朝だってのに汗でビッショビショじゃねぇかよ」


こいつは裕太ユータ俺の痺れのない学校生活の中でもこいつと喋っている時は楽しいと思える。


「俺はな、お前みたいな薄情者のクルマやろうと違ってチャリで学校まで来たからな汗もかくにきまってんだろ」


「車で来たっていいだろ?丁度親が仕事休みで送ってってあげるって言われたんだから」


「まぁな…」


(まぁいいけどさ、お前以外と帰るヤツいないから一緒に自転車で帰りたいんだよ)


そんな気持ちを抑えて相槌を打った。


朝が過ぎてからは時間は一気に過ぎていったいつも通りの痺れのない一日だった


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


放課後を迎え、部活のないライは颯爽と帰宅準備をし終えて自転車に乗って朝来た道を帰って行った。


その途中にライは自分の生活とは程遠いほど痺れのある光景を目にした。

それは、一人の少年が三人の男に細い路地に連れて行かれているのだ。


「ほら、さっさと歩けや!」


しかし、ライは自分とは無関係だし、やめておこう…とは思えなかった。全く痺れのない自分の人生にやっと痺れが訪れた


(ちょっと見に行ってみよう)


自転車を置いて少年が連れてかれた路地裏へ向かい、その現場を隠れて見ていた



「あのよ。めんどくせえからよ毎度言わせねぇで欲しいんだがよ、早く金渡せよなぁ!」


少年「や…やだよこれは僕がアルバイトして稼いだ金だぞ、お前らだって自分で稼げばいいだろ!」


「けっ!そうかよ。そいつは残念だ」


そういうと男達は腹に一発大きいのを喰らわした。


「ケホッ…お前らみたいなクズやるもんか、そうやって力を行使することでしかお金を手に入れられない能無しお前らなんかに!」


さっきまで顔を出していた太陽も灰の被った巨大雲に飲み込まれてしまった。


(…!あいつ同じクラスの降谷 白雨ふるたに しろうか!?)


シロウはライと同じクラスでいつもは物静かで何を考えているかわからない少年だ。


(アイツ殺されちまうぞ…)


ライは迷っていた。ここで助けるべきか、自分の恐怖心に任せて見ぬふりをするか、



そうやって悩んでいる間にも男達の怒りに身を任せた拳がシロウの顔に入った


「俺は別にケンカも強くねーしな…やっぱ怖えーわ。ごめんな」



ライは風を切って思いっきり男一人に飛び蹴りを喰らわせた


「オラァッ!」


全く別方向からの乱入者の登場により男たちは固まってしまった。


「…!なんだ!コイツは!?」


少しライにビビりながらも男達はライに近寄ってきた


「っ!ライ君!?なんで僕なんかのために…」


そんな言葉とは裏腹にシロウの目には涙が浮かんでいる。


「いや別に人助けとかじゃねぇぜ。毎日つまんなかったところによぉ。面白そうなことやってたから首突っ込んだだけだぜ。」


(あぁやべ。俺、完全におかしなスイッチ入ってるねぇ…)


シロウの友人と理解してか、男達はライに対して構えた


「なんだ、テメェはコイツのダチか?さっきの落とし前つけさせてもらおうかライ君。」



(あ。これやっちまったわ)

ライはニッコリ笑顔で後悔した



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ウッ…ん?あれ?」目を覚ますとさっきの路地裏に倒れていた。


ライはいつの間にか気絶していたようだ


「あ!気づいたんですね。でも無茶しないでください、僕のせいでライ君にまで迷惑かけて本当に…ごめんなさい…」


シロウはボロボロの体よりも顔をくしゃくしゃにしてライへ謝罪の言葉を述べた。


「いやいや、いいんだよ俺の勝手な判断でアイツらに喧嘩ふっかけたんだし。そんなことよりアイツらは?ポケットに俺の財布あるし、見過ごすわけないだろ。それよりここなんか寒くね?」


「それが…」シロウはさっき起こったことをどう説明すればいいのかわからない。



無理もないだろうさっき起こったことは常識の範疇を超えていたのだから。それでもシロウはさっき起こった状況を整理しながら丁寧にライに説明した


「ライ君がこてんぱんに気絶させられた後、僕たちと同じくらいの年齢の子だと思うんだけど…女の子が…」


〜〜〜〜〜〜〜〜数分前〜〜〜〜〜〜〜〜〜


自分を助けるために倒れているライを見てシロウは罪悪感で心が塗りつぶされていた


「その人は関係ないだろ!僕だけで充分じゃないか!」


「あー忘れてた。ごめんごめん今遊んでやるからよッ!」


シロウに向かって野球ボールくらいの石が飛んできた


「ヒイッ!」シロウはとっさに身構えた


「えっ?」


しかし、直撃するだろう石の当たった気配はしなかった。恐る恐る目を開けると、

一人の少女が男達の方を向きながら片手にさっきの石を捕まえていた。




男達はいきなり出てきた少女に驚いてはいたが、ビビってはいなかった、むしろ喜んでいた


「ほぅ、なかなかいい女じゃねぇか。お前みたいなヤツは沢山遊び方があるから好きだぜ」


シロウは知っていたこういう奴らが女に対してする遊びを。


(これ以上僕のせいでひとに迷惑はかけたくない!)


「君は逃げて!アイツらに捕まったらナニをされるか分からないぞ!」


しかし、彼女の返事はシロウの思考外の冷たい返事だった。


「アンタらみたいのへなちょこと一緒にしないでね、私強いから。弱くてダサいアンタらと違ってね」 



すると、男達三人は一斉に少女に向かっていった


「アァッ。もうダメだ」

なんとか体を動かそうとするも、ボロボロになった体は思うように動かなかった。


しかし、次の瞬間シロウが庇うべきは逆だったことに気づいた


「えっ?」



そこには、さっきまで動いていた男達の姿はなく、ただその形そっくりな三つの雪像が綺麗に魂ごと凍らされたかのように佇んでいた。


「ふぅ…結構綺麗に固まったわね。このまま崩してやりたいけど、は許してくれないよね…」


少女はまるで何もなかったかのように立ち去ろうとしていた。


シロウは思わず聞いてしまった

「な…何をしたんだ君は…」


少女は冷たく答えた


「ただ冷やしただけ。それ以上でもそれ以下でもないわ、そんなことよりそこに倒れてる彼、早く起こしてあげたら?もうすぐ大雨が降るわよ。あのバカでかい積乱雲が近づいているもの本当は今日は晴れの予報なのに…ホント変な天気ね」


シロウは空を見ると確かに不気味なほどでかい積乱雲が周りの雲を纏いながら近づいてきていた。空に目を奪われていると少女はいなくなっていた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「…ってことがあったんだ。」


信じてくれないだろうと思いながらもシロウはさっきまでの出来事を丁寧に説明した


「なるほど…なかなか痺れのある話だな。流石に俺も嘘だと思ったがお前の後ろにある雪像見ると信じざるを得ないな」


ピカッ


ドォォォォォォォォォォォォォォン


雷が外にいるものへ最後の忠告を知らしていた。このまま外にいたら生命の危険があると。



「ウオッ。ビビったぁ。こりゃすぐ降るぞ、はよ帰るぞ」


「う、うん。でもこの雪像人達は…」


「そんな奴らどうでもいいだろ。うおっ、降ってきた」


さっきの雷を合図に一斉に透明の弾丸が降り注いだ


ライとシロウはライの自転車までたどり着いた。


「じゃあ俺カッパ持ってきてねぇから急いで帰るわじゃあな」


「まって、ライ君。本当にありがとう君がいなければ僕は今頃…」


「あぁ。そういうのいいって感謝してるのはわかったからほら」


「えっ?」


「ハイタッチだよハイタッチ!」


「こう?」


パチンッ


ビリッ


ライは何かの衝撃を感じた

「…!」


「どうかしたの?」


「いや…なんでもない。急ぐぞ!」


そういうと、ライは大粒の雨をかき分けて自転車を進めていった。そして、大雨に負けないくらい大きな声でシロウに叫んだ


「あっそうだ」


「えっ?」


ライは笑顔でシロウに向かって叫んだ


「また明日!」


ーーーーーーーー数分後ーーーーーーーーー


(流石にこの雨かき分けて進むのは厳しいなぁ、雨宿りするのはなんか嫌だしな急がねば)


止まることの知らない大雨に打たれながらライは必死にハンドルを握りしめ進んでいった



(あとはこの田んぼ道を抜けるだけだ)



「ウォォォォォクライマックススピード」


その瞬間だった


一瞬だけ世界は真っ白になり音が盗まれた。ライは雷に打たれたのだ


さっきまで乗っていた自転車は無造作に投げ捨てられていた。



















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