第9話 巣の崩壊 ❇︎ゴブリン視点❇︎

 道端には、大量の魔物と1人の人間の死体が転がっている。


 そこに、1つの動くものがあった。


 ズクシに支配されていた魔物の中で、唯一の生き残りのゴブリンだった。


 ゴブリンはズクシの死体に恐る恐る近づき、持っていた棒で突いた。


 生首は簡単に転がり、ゴブリンと目が合う。


 涙を流しながら、悔しそうな表情の生首を確認して、ゴブリンは安堵した。


(これで巣は守られた)


 巣に報告する為、生首を乗り越えたゴブリンの背後で、何かが動く気配がした。


「どこに行くんだ。お前は、仲間を見捨てて逃げるのか?」


(有り得ない。この声は•••) 


 ゴブリンは後ろを振り向き、動けなくなった。


 ゴブリンの視線の先では有り得ない光景があった。


 地面に座る首の無い死体が、ゆっくりと自分の頭を元の位置に戻している。


 ゴブリンは死体の背後にいる為、その顔は

見えない。


 しかし、首が乗せられた身体は、まるでさっきまでの光景が嘘だったかの様に、自然に立ち上がった。


「もう、元には戻れないんだな。ベック」


 ゴブリンは身体中の力が抜け、自分が膝をついた事にも気付かない。


 ゴブリンの頭の中にあったのは、巣の崩壊のことだけだった。



 




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る