鏡#2

 放課後、学校の屋上。夕日に横顔を照らされながら1人佇む篠原。


 篠原は怒りのあまり戦慄いていた。


 ついさっき人生で初めて振られたのだ。自分の容姿に絶対の自信があり、振られることなど想定していなかった篠原は言葉を失い、立ち尽くした。


 カバンから手鏡をとりだし、覗き込む。


 やはり、自分は美しい。なのになぜ大岩は振ったのか、と理解できない篠原。


 篠原は怒りと、そして生まれて初めて自身の存在意義への不安を感じていた。



 ☆



「ただいま!」


 篠原は帰宅すると傷心を誤魔化し、まず父親の仕事部屋に行く。一応ノックしてから部屋に入ると父は笑顔で迎えてくれた。父は大体家にいてパソコンと向かい合う仕事をしていて収入の方も潤っている。


「おお、花玲帰ったか」

「うん。パパ」


 篠原は父と軽い抱擁を交わした。


 次は兄の部屋だ。同じようにノックして入ると兄も笑顔で迎えてくれた。兄はとても整った顔立ちをしていて、モデルをやっている自慢の兄なのだ。


 兄とも軽く抱擁し、その後篠原は自室にこもった。


 普通の家族と比べたら少し仲が良すぎるかもしれないが、これが篠原家の日常である。

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