第31話 予言が成就される時

 間一髪、なんとか脱出したその背後で、入り口の大きな梁が燃え落ちて行く。

 アルウィンは、大きく息を吸い込みながら煤に汚れた顔をぬぐった。どこも怪我はしていない。ワンダも、毛がところどころ焦げているだけだ。二人で火の中を強引に突破して、最後は、外側から板の打ち付けられている勝手口をワンダの力任せの体当たりで破って出てきたのだった。

 「ありがとう、ワンダ。助かったよ」

 「ふにゅー。雪、つべたい…」

アルウィンは思わず笑みを漏らし、だが、すぐにその表情は硬くなる。

 まだ地下室に仲間がいたのに、オウミたちは、迷いなく火を放った。

 ノックスの町で、レトラの長老夫婦にしたこともそうだ。目的のためならば犠牲も、手段も選ばない。たとえ五百年前に交わされた”エサル”との約束のためだったとしても、初代王への忠誠のためだったとしても、それは許されることではない。

 おそらく、五百年は長すぎたのだ。

 変わらない関係があれば、変わってしまう関係もある。人の思いもまた、積み重ねられていくうちに歪み、いつしか…その本来の意味を見失ってしまったのだろう。


 ふいに、広場のほうで、わっと声が上がった。剣戟の音だ。はっとして、アルウィンは立ち上がる。

 「ワンダ、まだいけるか?」

 「おう、頑張るぞ!」

 「それじゃ、行こう。」

二人は走りだす。脱出した場所は前庭、そこからは広場までほんの数歩の距離だ。




 広場では、元騎士見習いから成る自警団と、黒マントの”エサルの導き手”たちとが雪を蹴散らしながらの大混戦のさなかにあった。

 普段は市が立ち、商人たちが賑やかに取引している場所だ。普段なら夜でも人通りが絶えない町の中心的な場所だけに夜でも明るく、周囲の建物の軒先に吊り下げられたランプには煌々と火が焚かれ、踊るような戦いの影を濡れた石畳の上に映しだしている。

 広場から続く、町の外への道は、閉ざされている。

 めったに門を閉ざさないこの町だが、今夜に限って門が二つとも閉ざされているのは、前もってアルウィンが伝え、町のまとめ役であるユミナの号令で実施された結果だ。逃げ道を失い、抵抗する”エサルの導き手”たちの中に、オウミの姿もあった。アルウィンは、そちらに向かって進んでいった。

 「おい、あれ」

 「領主家の…」

自警団の若者たちが囁きあっている。何をしに来たのか、とでも言いたげな口調だ。

 アルウィンは構わず、戦いを避けながら進み続ける。目指す人物はその先にいる。

 それに気づいたオスミが、黒いマントを翻して自らもアルウィンに近づいていく。二人は同時にぴたりと足を止めた。互いの間合いのちょうど触れ合う場所。それ以上、一歩でも踏み出せば、剣の届く距離になる。

 オウミの手には、黒い艶やかな色のナイフが握られている。ハザル人の鍛えし剣、”暗殺者”の友――。

 「まんまとしてやられたわ。町ぐるみの罠だったとはな」

老人は、にやりと笑う。

 アルウィンは無言のままに、自分も腰から剣を抜いた。

 引き抜くとき、ほんのわずかに刃が震え、鞘がりん、と鳴る。こちらも、あらゆる光を吸い込むような漆黒をして、同じくハザル人の手によるものと分かる波模様が浮かび上がっている。大人の腕ほどの長さで、刃は片方にだけついている。

 オウミの視線が、思わず釘付けになっていた。

 「ほう。ハザル人が長剣を作るとは、珍しい。しかも並の業物ではない。それは――」

刹那の沈黙と、息を飲む音。そして老人は、高らかに笑い出す。

 「”ファンダウルス”! いにしえのイェルムンレク王の剣か。しかし、それを使う者が、このような軟弱者とは」

笑いながら、オウミは風のようにアルウィンの懐に飛び込んでくる。髪の白い老人の動きとは思えない早さだ。目で追うのはやっと、避けるので精一杯。風圧で皮膚が切れ、鮮血が雪の上に迸る。

 「エサルも哀れなものだ。名に聞こえし名刀も、扱う子孫がこれではな」

 「アルウィン~!」

後ろでワンダが叫んでいる。援護に入りたいが、他の敵に阻まれて近づけないのだ。


 だが実際には他の自警団の若者たちも、二人の動きがあまりに激しすぎて、誰も手を出せないでいた。

 どちらが劣勢なのかは見れば判る。アルウィンは逃げるばかりで、一太刀も打ち返せていない。しかし逆に、一度も致命的な攻撃を受けていなかった。滑りやすい雪に濡れた敷石の上でも、彼はうまく攻撃を避けながら立ち回っている。

 次第に周囲で見守る元騎士見習いの若者たちも、これがただの劣勢ではないことに気づきはじめていた。

 剣の腕が悪いのではない。ただの素人なら、手練れと一対一で斬り合って、まだ立っていられるはずもない。

 刃渡りの長過ぎる剣の攻撃は当たれば威力は高いものの、間合いが大きく、振り回しすぎれば体力を消耗する。彼は武器の特性と己の体力を知り尽くし、ただ一撃を決めるために隙を伺っているのだ。


 互いの吐く白い息が風に流れる。

 「どうした、逃げるばかりか? 意気地なしめ。祖先の誇りまでも忘れたのか」

 「……」

アルウィンは思わず、足を止めた。オウミとの距離は、ほんの数歩だ。

 「誇り」と… 彼は言った。

 その言葉は胸の中で今も、ずっと燻っていたもの。耳にした瞬間、目覚めかけていた火種が胸の中で燃え盛る。



 それは父、エリオットが遺した最後の言葉だった。



 ――五年前、ちょうどこの場所で、その日も雪が降っていた。

 いつも忙しくしていて、ほとんど話をしたこともなかった父。アルウィンが剣術の稽古を休んだり、馬術の訓練で落馬したりした時には決まって雷を落としていた厳しい男が、その日だけは穏やかだった。

 町は王国軍に包囲され、どこにも逃げ場はなかった。最後の戦いと知りつつ出陣する騎士たちの先頭に立っていたエリオットは、見送りに来た家族の中からアルウィンだけを呼び寄せて、銀色の首飾りを渡し、こう囁いた。



 王とは”守る者”のこと。

 たとえ生きて帰れないとしても、”誇り”のため…この町を守るために行く。



 敢えて死に赴くことを「誇り」だと言う意味を、かつての自分は理解することが出来なかった。ただの強がりにしか聞こえず、無意味な死だとすら思っていた。

 今なら判る。父は、過去の栄光の記憶に縋ろうとしたわけでも、死に酔っていたけでもなかった。自分の死によって守られるものがあるのなら―― 一人の死によって、より多くが守られるのなら、迷いなくそれを選べることこそ、彼の”誇り”だったのだ。

 「誇りとは、王冠を戴くことでも、敵を倒すことでもない。」

アルウィンは、剣を構え直した。たとえ方法は違っても、目指したものは同じ。そう、アルウィンの歩いた道は、結局は父のそれと同じところを目指していた。

 「この町と住む人を守ること――それが、我が血の誇りだ!」

鋭い踏み込みで一閃、かわされたところに返す刀でさらに一閃。オウミの首もとが切れ、マントの切れ端とともに首に下げていた金属板のようなものが、鎖とともに飛び散った。後ろに一歩、あとすさった老人は、雪だまりに足をとられて膝をつく。その手から武器が落ちた。

 「強い意志…迷いなき剣閃。なるほど…使い手は並でも、さすがは王の武器…か…」

だが、攻撃は浅い。老人は、血のしたたる首の傷を押さえながら、閉ざされた門に向かって凄まじい勢いで走りだす。

 出口もないのに、なぜ門に向かうのか。まさか、城壁を登って湖に飛び込むつもりなのか。

 「待て!」

慌てて追いかけようとしたアルウィンだったが、背中に、重たい何かがのしかかってそれを止めた。

 「だめぇっ」

けむくじゃらの塊とアルウィンは、折り重なるようにして地面の上に倒れた。

 「ワンダ? 一体、何を…」

 「危い、ニオイ!」

ワンダが叫んだ瞬間、すぐ側で、閃光が走った。

 遅れて衝撃が。

 声を上げる間もなく、アルウィンとワンダは一緒になって敷石の上を転がった。まだ人に踏まれていない、粉のような雪が爆風で舞い上がり、吹雪のように視界を覆う。まだ戦っていた人々も、端から巻き込まれていく。

 オウミたちは町の門にも爆薬を仕掛けていたのだ。それも領主館よりも大量に。

 何かあったとき、追っ手の追撃を遅らせるためか。或いは、本当にこの町の全てを燃やして逃げるつもりだったのか。


 夜空から雪が舞い降りてくる。

 仰向けになったまま、アルウィンはそれを見つめていた。体じゅうが痛い。爆風で叩きつけられたらしく、一人では起き上がれそうもない。仰向けに倒れたまま、彼は夜空にゆっくりと片手をかざす。

 「”黄金の樹は剣となり、白銀の樹は盾となり”…」

あの日、ここで銀色の樹の形をした古い紋章を父に渡された。

 紋章の中心にはめこまれた銀盤に刻まれた文字は、掠れてもうほとんど読むことは出来なかった。だが、意味は、渡された時に父が教えてくれた。


  ”盾となりて守るもの

  我は再び汝と会わん”


側で、くしゃくしゃの毛玉のようになっていたワンダが、よろよろし起き上がる。

 「アルウィン、…いきてるか?」

 「生きてるよ」

動けないアルウィンの上にかぶさるようにして、ワンダの顔が覗き込む。

 「アルウィン、強かったぞ。頑張った。」

 「うん。」

 「敵もういない。だいじょうぶだ。家かえるぞ」

 「…うん」

呟いて、彼は目を閉じた。総ては最初から繋がっていた。今なら、あの言葉の意味も分かる。

 周囲を走り回る人の足音と声の中で、ワンダに担ぎ上げられながら、意識は、雪の中に溶けていった。




 シドレク王をアルウィンの母ユミナの館に送り届けたあと、ウィラーフはすぐさま次の行動に移った。再び馬に乗ろうとしているところを、シェラが目ざとく見咎める。

 「ちょっと、王様を置いてどこ行くつもり?」

 「デイフレヴンがついてる。」

 「アルウィンを探しにいくのね」

シェラも、急いで別の馬を引く。

 「あたしも行くわ。」

 「邪魔になる。お前はここに――」

 「あなた一人で探しに行ったら、アルウィンに叱られるわよ。あたしの護衛だったら叱られない。ね?」

 「……。」

やや強引な理屈の気もしたが、確かに、アルウィンからは「本来の主を守れ」と言われている。負傷しているシドレク王を置いて援護に行ったりすれば、後で叱られるのは違いない。

 ウィラーフとシェラは、前後に続くようにして馬を走らせた。町の注意は、ほとんど炎上している領主の館に向けられている。裏路地にはほとんど人の姿はなく、昼間と違って馬を走らせても誰かにぶつかりそうになることはなかった。

 ここから見る限り、火の手は収まりつつあるように見える。だが、町の中にはまだ、逃げまわっている”エサルの導き手”の郎党たちがいるはずだ。

 「門は、二箇所とも封鎖してあるんだったわよね」

 「ああ。爆発が起きるとすぐに封鎖された。奴らもまだ、この町の中にいるはずだ。――そっちは、自警団に任せておけばいい」

だとすれば、今回は、先手を打つことに成功したのだ。さすがに自警団も素人ではない。オウミたちも、そう簡単には逃げられないはずだ。

 今のところ、シドレク王の身に差し迫った危険もない。先回りできたことで、最悪の未来は回避できたのだろうか。

 そうとは思えない胸騒ぎが、シェラにはあった。あのオウミという老人が、逃げ損ねてやすやすと捕まったりするだろうか。予言された未来は、「クローナが炎に包まれる時」。今の所、炎に包まれているのは町の中心の、かつての領主館だけだ。それだけでは、足りない気がする。まだ、何か――


 その時、ずん、と背後で大きな爆発音がした。

 「爆発だ!」 

 「どこだ?!」

 「正門だ! 門が壊された」

人々の声から、門が吹き飛ばされたらしいことが伺える。「何人か、けが人が出てる。応援に――」

 「きゃあ、誰かっ」

ふいにけたたましい叫び声が、どこかの二階から響き渡った。

 「火事よ! 門の上で誰かが火を付けてる!」

見上げると、窓から身を乗り出して、門を指さして叫んでいる女性がいる。


 昼間訪れた、アミリシア街道へと通じる城門のほうだ。門の上には確かに、何か松明のようなものがちらちらと揺れている。

 さっき爆発したのがレミリア街道に通じる城門のほうだとしたら、賊は、閉ざされた門を両方とも破壊するつもりなのか。

 近くの住人たちが慌てて自警団を呼びに走ったり、水を運ぶための桶を持ち出したりしている。ウィラーフは馬を飛び降りると、腰の剣に手をかけながら城門に向かって走り出した。シェラも続く。

 門に詰めていた夜警は、気を失って一階の床の上に延びていた。侵入されてから、まだ、そう時間は経っていない。城門の上の見張り台へと続く狭い入り口は開け放たれている。ウィラーフは無言に剣を抜くと、階段を駆け登っていく。

 「ちょっと!待って」

シェラも、いつも隠し持っているナイフを手探りしながら後を追う。

 門の上部にある見張り台に辿り着くと、そこには、黒いマントの男が一人、今まさに、手にした松明を投げようとしているところだった。

 「ここで何をしている! その火は…」

言い終わらないうちに、男は町の外のほうに向かって火を放り投げた。そして見張り台から城壁へ飛び降りると、そのまま町を見下ろす城壁の上を逃げてゆく。

 「おい、待て!」

 「――まずいわ」

見張り台から身を乗り出したシェラは、放り投げられた火が橋げたのすぐ側、伏せた小舟の近くに落ちているのを見つけていた。

 漁労用の小舟は冬の初めからそこにあり、誰も注意を払っていなかった。

 ウィラーフも、昼間目にした時はありふれた風景だと認識していて、まさかそこに何かが仕掛けられているとは想像もしていなかった、

 けれど二度の爆発と、賊がそこに「火を放った」という事実が今は、不自然さを際立たせている。小舟の周囲に散らされた藁くず。伏せた小舟が浮き上がって見えるほど隠された、黒っぽい荷物の山。火はちりちりと藁を燃やし、やがてそれは小舟のほうへ近づいていく――

 「ウィラーフ、城壁のほうへ逃げて! 早く!」

シェラが伸ばした手が届くより早く、背後から、閃光と爆風が押し寄せてきた。


 意識が飛んでいたのは、おそらく一瞬のことだ。冷たい水の感覚で、否が応にも目が覚める。

 「ぷはっ」

水面に顔を出し、何とか息を継いだ。すぐ側で、小舟があった辺りの地面と城門の一部が燃え上がっている。水深は、足が辛うじて湖底につくか、つかないかといったところ。

 シェラは、つま先立ちをしながら燃え盛る門を見上げた。爆風で外に向かって飛ばされたのだ。湖側に落ちたお陰で首の骨を折らずに済んだのは、まだ運が良かったたというべきか。岸からは遠い。雪の降る日の湖の水温は、とても常人が服を着たまま泳ぎきれるものではない。だが、シェラは泳ぎの得意なルグルブの民だ。

 思い切ってコートを脱ぎ捨て、泳ぎだそうとしたとき、彼女はふと、自分の手に絡み付いているものに気がついた。銀色の長い髪。――そうだ。

 記憶が蘇ってくる。爆発のあの瞬間、ウィラーフが彼女を庇おうとして、目の前に飛び出してきた。爆風に背を向けるようにして…、そして…。

 「…ウィラーフ?」

返事は無かった。力なく浮いた腕が、冷たい水底に沈み込もうとしている。

 「ちょっと、目を開けて。ウィラーフってば!」

シェラは慌てて、ぐったりした身体に両手を回して引き上げた。顔面は蒼白で、水面に上げても息をしている様子がない。

 「うそ…でしょ…」

だが、彼女はすぐに気を取り直した。

 ここで諦めたら、彼は本当に死んでしまう。それにこの状況では、誰かの助けを待っていることも出来ない。ぐずくずしていたら、二人とも身体が冷え切って岸にたどり着く前に力尽きてしまう。やるしかないのだ。

 彼女は、ウィラーフの身体を抱えたまま、冷たい水の中で必死に岸に向かって泳ぎ始めた。

 (人魚の末裔が冬の湖で溺死なんて、お伽話にもなれないじゃない)

体はしびれ、手足の感覚はない。それでも諦めず、ようやく、足がしっかり水底につくところまで辿り着いた。

 濡れた自分の重たい体を岸に引き上げ、一緒にウィラーフの体も足まで引き上げる。足が滑って、泥の中でもがきながらの作業だ。既に体力は限界を越えている。


 シェラは、這うようにしてウィラーフに近づいた。自分の体も冷え切っているが、ウィラーフは、それ以上に冷たい。閉ざされた瞳はぴくりともせず、唇はすでに死者のように青ざめていた。

 「…あたしのせいなの?」

――”恋人は、その腕に抱かれる前に凍えるさだめ。” 

 「そんなの、酷いじゃない。あたしは、ただ、この人に幸せになってもらいたかっただけなのに…」

恋人というほどの関係でもない。ともに旅してきた月日は、友達以上のものではなかったはずだ。かけがえのない仲間。腕はたつのに不器用で、妙な所で馬鹿正直で、そして、胸の痛みに耐えながら真っ直ぐに前を見て生きていた――

 側にいて、ともに笑い、ともに泣きたいと思えた――大切な人。


 彼女は、濡れたウィラーフの胸に突っ伏して、その胸を叩いた。

 「何がライラエルの再来よ。何が将来の族長候補よ。自分の未来もどうにもならないなんて、それなら未来を知る力なんて、無ければよかったのに!」

拳で叩いて、思い切り揺さぶる。

 「ウィラーフの馬鹿! 目を開けてよ、予言通り死ぬなら、せめて…!」

 かすかな反応。

 「…あ」

叩かれた衝撃か、揺すったせいか。さっきまで仮死状態だった体に僅かな赤みがもどってきている。ウィラーフは、何度か咳き込んで、水を吐き出した。

 「ウィラーフ!」

耳元で名を呼ぶと、彼はかすかに目を開けて、すぐ目の前にあるシェラの顔をぼんやりと見つめた。

 「死んだかと思ったじゃない…」

温かいものが頬に零れてくる。

 「涙が止まらないの。どうしてくれるのよ」

 「……すまん。」

呟いて、眼を閉じる。「あとで…あやま…。」

 ようやく、人の集まってくる声が頭上に聞こえ始めた。

 二人に気がついた町の人々が、ロープや梯子、毛布を持ってこちらに走ってくる。

 夜明けが近い。さっきまで闇の中にあった湖の表面が、明るく輝き始めている。


 助けが辿り着くまで、彼女は、ウィラーフの体を腕に抱いたまま泣きじゃくっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る