第4話 道中
「絶っ対離したらダメだからね、魔獣じゃなくても勝手な判断で行動しないでね!はぐれたりしないでね!!」
「……」
わかっているはずだった。イヴはそういう性格だとわかっていたが、横でしっかりと手を握る彼女に溜息が出た。
「イヴちゃんのいうこと聞けよセシル~」
「ちゃんと前見て歩けよ!!」
前を歩くライリーに茶化され、つい声が大きくなる。
ルーラ大森林へ向かうにはまず山までの荒地を抜けなければならない。
作物が育たず人が住むのは難しいが魔獣もいないし危険は少ない。
大森林の調査が決まるとその後は早かった。次の日の日の出とともに村を出てその日中に荒地を抜け山道に入る手前で野宿する予定だ。
「今頃レオンが悔しがってるなぁ」
「遠足じゃねぇんだぞ、あいつまで連れて来れるか」
今日の昼には村に行商人が到着する。
レオンもその頃には村で調査隊が組まれたことを知るだろう。
セシルも同行していると知れば、ひどく悔しがるだろう。
「俺にはイヴの荷物こそ遠足に張り切りすぎた奴にしか見えねぇよ」
「これ全部採取したもの入れる用だからね、誤解しないで」
「.....多すぎるだろ」
イヴはかなり大きなリュックを前後にふたつ背負いセシルにも1つ背負わせていた。
雑談をしながら丸一日歩き倒し、ようやく山道近くになり野宿の準備をする。
セシルは軽口を叩く元気はなく疲弊しきっていた。
テントを張り食事をとり皆すぐに眠りについた。また早朝から山道を歩かねばならない。
「足が痛くてもおんぶしてやれねぇから頑張れよ〜」
「....だれが!頼むか!!」
「無理はしないでね、山道危ないんだから」
「...なんでイヴは平気そうなんだよ」
「薬売りに街まで行くの慣れてるから...」
慣れる慣れないの話なのか、と思ったが会話をし続ける元気もなくなってひたすら足を動かした。
山道に入ってからこまめに休憩をとりながら進んでいき、すぐに日が暮れた。夜行動するのは危険なので動けるのは日中だけ。セシルは自分のせいで予定よりずっと進んでいないことに気付いていた。だがどうにもできないことが悔しくて仕方なかった。
「これ、疲労回復に効くから飲んで。不味いけど。」
「...不味いのかよ」
「すっごい苦いの。でも効くよ。」
夜を明かすためにテントで休む。
イヴは皆に疲労回復効果のある薬湯を配る。
すでに大の男四人が苦い苦いと騒いでいたので気は進まなかったが笑顔でコップを差し出しているイヴに逆らえず一気に飲み干した。
「毒じゃん!!!!」
「どっ...それ結構高いんだからね!」
「いや〜こりゃぁ...薬って言われなきゃわからんぜ」
「正直毒かと思うほど不味かったのは確かだ」
「.....か、体に良いものは不味いものなんですよ!」
口の中に広がったあまりの苦さと不味さで思わず毒呼ばわりしてしまい、怒られる。
イヴが言うのだから、この不味い薬はしっかりと効くのだろうと思う。
「ほらお前らもう寝ろ、明日も日の出に出発だぞ。」
「セシルはへばったら置いてくからな」
「誰がへばってるんだよ!」
「こっちの火消すぞー」
テントに入り込んで目を閉じる。
セシルは村から出て、今こうして大森林を目指していることがとても嬉しかった。
ずっと歩き詰めで理想の冒険とはいかなかったが、誰かのために自分が行動できるのが嬉しいのだ。これで調査も無事終わり、薬草を採取できればもっと皆から認めてもらえる。
それだけで、よかったのに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます