第4話 魔王の修行

「ふふ♪ じゃあまずは私が魔法について教えてあげるわ」


「よ、よろしくお願いします!」


 修行1日目。

 まずは魔王のテスタロッサさんによる魔法の修行だ。

 しかし僕の魔法の実力は下の下。いったいどうやって鍛えるんだろうか?


 あ、そういえば僕の魔法の腕がダメダメだということをまだ伝えてなかった。言いにくいけど言わなきゃダメだよね……。


「あの、すいません。実は僕魔法が……」


「全然使えない、と言いたいのでしょう? そんなこと言わなくても分かるわ」


 図星を刺され僕はビクッとする。

 すごい、さすが魔王だ。そのくらいのことは見るだけでわかっちゃうんだ。


「じゃあどうやって鍛えるんですか? 魔法の練習しようにも魔法が使えないんじゃ練習のしようがないんじゃないですか?」


「そうね。だからまず君には魔法を使うことができる魔力量になるまで基礎特訓してもらいます」


「基礎……特訓ですか?」


 どんな特訓なんだろう。

 聞いたことがないけど、魔力量を増やせるなんてすごい特訓なんだろう。


「魔力も筋力と同じなの。限界まで使って魔力の器をぶっ壊さないと上限は増えない。だから君には死ぬギリギリまで魔力を使って、回復したらまた死ぬギリギリまで魔力を使ってを繰り返してもらいます」


「……え?」


 なんか恐ろしい言葉が聞こえたぞ?

 魔力は生物が生きるのに必要な力だ。消費しすぎれば魔力欠乏を起こしてポックリと死んでしまう。


「それって、かなり危なくないですか?」


「そうね。でも年を取らないこの空間じゃ魔力を増やすにはこの方法しかないわ。私も君が死なないように気をつけるから安心して死にかけてね♪」


「ええ……」


 そうだ。見た目が綺麗だから忘れかけてたけどこの人は魔王。

 人間の常識が通じる人じゃないんだった……。


「でもそんなコツコツとしたやり方じゃ凄い時間がかかるんじゃないですか?」


「そんなことないわよ。君のレベルだったらそうね……500年もあれば魔法使いとして一人前になれると思うわよ」


「ご、500年!?」


 僕は目を剥いて驚く。

 確かに僕は落ちこぼれだけどそんなにかかるの!?


「そんなに時間が経ったら外の世界は知らない世界になっちゃいますよ!」


 僕の両親はもう死んじゃっているけど、ここまで育ててくれた村長さんにお別れも言えないのは寂しい。

 せめて一言お別れを言いたかった……。


「安心して。この『無限牢獄』は時間の流れがとても緩やかなの。ここで一年過ごしてようやく元の世界で一日が経つのよ」


「ほ、本当ですか!?」


「ええ、私が魔法で調べたから間違いないわ」


 そう言ってお姉さんは胸をぽん! と叩く。

 魔王様の言うことだ。合っているに違いない。


 それにしても一年で一日か……。

 本当に500年かかったら元の世界では500日経っているってことか。それなら心配はかけると思うけど大丈夫かな。


「……分かりました! 僕頑張ります!!」


「ふふ。いい子ね」


 そう言ってテスタロッサさんは僕の頭を優しく撫でてくれる。

 撫でながら僕を見るその瞳は優しくて、まるで亡くなったお母さんみたいだ。テスタロッサさんが魔族だということを思わず忘れちゃう。


「じゃあ……始めましょうか。もし本当に死んじゃったらごめんね♪」


「……はい」


 とてつもない不安を抱えながらも僕の魔法修行は始まった。

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