来訪者
シヨゥ
第1話
面倒見のいい性格だと言われることが多い。ただ意識して面倒を見ているわけではない。しかし、なぜかそんな評価をされることが多い。嬉しくはあるが不思議だ。
そんな僕のところには何かが破綻している人間が転がり込んでくる。大学の頃の先輩もそのうちの1人だ。
研究職をしている先輩が玄関前でうずくまっていたのが一昨日の夜のこと。先輩は月に1,2度突然現れる。
先輩には集中しだすと寝食も忘れて作業に没頭してしまう癖がある。そして燃えカスのようになって僕の家に来る。なんでも自宅に帰るより近いらしい。
初めは驚いたものの毎月のこととなると驚きもしなくなった。
濡れた犬のような匂いがする先輩を洗いあげ、布団に叩き込むまでが初日のルーティーン。風呂ぐらい自分で入ってくれと思う。しかし、脱衣所で寝落ち、シャワーを浴びつつ寝落ちと初回にやられて諦めた。乾かし終える頃には完全に熟睡モードに入り、ここ最近では何も着せずに布団に叩き込んでいる。
約36時間ぶりに布団から這い出してきた先輩はもちろん全裸だ。こちらは気にしないし、先輩も気にしない。それでも少しは恥じらいはあるのか、洗濯済みの服を見つけるといそいそと着替えている。
「そんじゃ、世話になった」
着替え終わった先輩は千円札を置いて去っていく。宿泊費のつもりなのだろう。
「無理しないでくださいよー」
僕の声かけに手をひらひらさせて歩いていく。その姿は非常にかっこよかった。
来訪者 シヨゥ @Shiyoxu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます