寂しいビール事情――ブランド本国と生産国
現在の日本で販売されている、有名な海外ブランドビールの生産地は、例えば次のようなことになっている。
すなわち、ハイネケンやカールスバーグは日本、バドワイザーやレーベンブロイ、ヒューガルデンは韓国、コロナは中国……
ただ、現在はこうだとしても、すぐにまた別の生産国に変わったりもするので油断はならない。
原因としては、ビール会社同士のライセンス契約やら合弁やら買収やら、そうした経済上の動きがドラスティックに行われているためらしい。
例えば、バドワイザーは当初アメリカから輸入されていたものが、キリンとの合弁会社による国内生産となり、この合弁関係が解消された後もキリンによるライセンス生産が続けられていたのだが、二〇一八年末ごろにそれも打ち切られ、それ以降は韓国産のものが輸入されるようになったとのことである。
このような状況に僕が気付いたのは数年前。
スーパーだったか、酒類量販店だったか、ふと手に取った欧米ブランドのビールの裏書を眺めていたところ、その生産地が何とアジアの国になっていたのに愕然としたのが始まりである。
それ以後、海外ブランドのビールを見かける際には裏書によくよく注意するようになり、既述のような事態を認識するに至ったのである。
海外のビールを口にしたいと思うのは、単に味だけではなく、パッケージのデザイン性を始め、ブランドや製品にまつわる歴史的、文化的背景など、さまざまな付帯的価値をイメージし、それを好感してのことが多いように思われる。
ドイツビール、ベルギービール、メキシコのビール――どれもその本国にかかるあれやこれやに思いをはせながら味わうのが一般だと思うが、よくよく調べてみたところ現実の生産工場はまったく別の国に移っていましたとなれば、羊頭狗肉と言おうか、何だか詐欺にでもあったような幻滅感を抱くのではなかろうか。
少なくとも僕に関してはそうである。
もっと釈然としないのは、販売店の値札やポップにおいて生産国を偽り、中国産のコロナをメキシコ産、韓国産のバドワイザーを米国産などと書かれている場合があることである。
一年ほど前だっただろうか、さる大手スーパーにおいてそのような値札を発見し、義憤に駆られて――内心の半面では自分を大人げないと思いつつも――近くの店員にやんわりと指摘したことがある。
それ以後、その店舗では生産国が正しく表示されるようになったように見えるが、他の販売店などでは、間違ってなのか故意なのか、はっきりとしないけれども、現実とは異なる〝イメージ上〟の生産国が表示されているケースが、いまだに後を絶たないように感じられる。
もっとも、生産が他の国で行われるようになったとしても、味が同じならばいいではないかという意見もあろう。
ただ、真偽のほどは定かではないが、ウェブで調べたところ、生産工場が変わって、原材料や味が変化したという記事を目にしたりもする。
もしそれが本当だとしたら、何ともいかがなものか。
次回は、少し目先を変えて、日本におけるイギリスやアイルランドのビール事情について述べてみたい。
<続>
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