第4話

紗枝は家に帰ってウサギを勉強机の上にそっと置いてみた。どれだけジッと見つめていても教室で見た時のように感動した目では見られない。ウサギの表情も、まるで奈緒の家に帰りたいと懇願するかのような寂しそうな表情に見えた。


「まだ奈緒ちゃんウサギを探しているのかな……」

机の中を必死に探していた奈緒の姿が紗枝の脳裏に浮かぶ。


このウサギは奈緒にとって大切な物である。今もまだ、家に帰ってからカバンの中を必死に探しているのかもしれないし、ウサギが見つからなくて不安な思いをしているかもしれない。


外で聞いた時には魅力的に聞こえた瑠美香の助言は、家に帰って一人冷静になってから振り返ってみると、なんと酷い作戦なのだろうかと思えてしまう。紗枝が勝手に持ち出してしまったのに、それを奈緒の探し方が悪かったせいにしてしまうなんて、責任転嫁もいいところである。


もしかしたら正直に言うと、いじめられてしまうかもしれないし、少なくとも凄く怒られるだろうから正直怖い。


でもだからといって、みんなにウサギを見せてあげたくて、せっかく学校に持ってきてくれた奈緒の心をさらに傷付けてしまうのは、もう紗枝には耐えられなかった。


奈緒と、そして紗枝の勉強机の上で佇んでいるウサギの心細さを考えれば、今すぐにでも返さなければならない。そう思い、紗枝はすぐに奈緒の家へと向かった。

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