第7話 軽い事件

「あぁ、駄目だ、死んでしまう」


 今、私の目の前で死にそうになっているのは、まだまだ若い新任化学教師の軽井先生だ、何とみじめなことに、3階に来る階段で体力が尽きたのだ。かねてより、運動不足が懸念されるほど細くて弱そうだったけど、まさか、階段が限界だったなんて、いつも授業にちょっと遅れる理由はこれだったのか。


「はぁはぁ、ちょっと早く行こうとしたら、まさか、死にかけな姿を生徒に見られてしまうとは」


「ねぇ先生、大丈夫?」


 息切れと動悸、それと汗、完全に運動不足から来るものだ。


「息切れ、動悸、まさか、病気……」


「いいや、れんちゃん、普通に運動不足だよ。運動しな」


「いいや!絶対病気だ、校長先生に言って、今日はもう帰らせてもらおう、よし決めた」


 あー、完全にサボろうとしてる、さぼる言い訳が軽すぎるよ、絶対に帰らせてもらえないよ。どうしよ、今日はうちのクラスは午後に化学あるから帰られるのは嫌だなー。


「れんちゃん、頑張って、ほら、これあげる、お菓子」


「加奈さん、、、、おれ、チョコ苦手」


「ならこれ、あげますよ、飲みかけだけど」


 冗談のつもりで、お茶を渡す、まぁ、受け取るわけないか。


「あ、ありがと、助かる」


「え、」


 飲んだ、先生は、なんの躊躇もなく、飲んでしまった、きっと、死にかけだから、意識していないのか。


「れんちゃん、それ、間接キス」


「あ、あああああああ」


 躊躇なく飲んだから、もしかして、普通に女慣れしてるのかと思ったら、普通に動揺しまくっていた。意外な弱点見つけたかも。女慣れしてない。


——―――——―――——――

「校長先生、病気なんで帰っていいですか?」


『軽井先生、嘘だよね、これで5回目、しっかり働いてください』


 しっかり、校長先生に怒られ、帰れなかったらしい。

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