第6話 軽い冗談

 軽井先生は、よく化学準備室に入り浸っている、どうやら、居心地がいいらしい。ってことで行ってみようと思った。


「れんちゃんー!遊びに来たよー」


「あ、え、加奈さん、こわ、急すぎ、帰って」


 えぇぇ、いきなり冷たい、軽さはないものの、何という冷たさなんだろう。


「いいじゃん、いっつもここで、何してるのかなって思ってきちゃった」


「来ちゃったじゃないよ。えぇ、何もないんで帰った方いいよ?」


 どうやら、ここにはなにもないらしい、絶対嘘なのは分かってる。


「あ!コーヒーメーカー、大人っぽい、けど、これって、持ち込んでいいの?校長先生とかに怒られない?」


「あぁー、それね、大丈夫でしょ、まずいかな?それに、それコーヒーでないよ?」


 え、かっる、大丈夫でしょって、100パーセント、許可貰ってないって事じゃん、あーあ、また怒られるんだこの人、この前の勝手にSHRだって怒られてたし、まぁバレなきゃいっか。


「え、これ、じゃあ何出るの?」


「塩酸」


 あ、これ完全にまずいやつだ、恐ろしいぐらい即答だった、この人コーヒーメーカーに塩酸入れてるんだ、化学の先生だし、おかしくないのかな。いいや、おかしいでしょ絶対におかしい。


「え、めっちゃなんか苦悩してない?冗談だよ?ほら飲んでみなよ」


 そう言って、れんちゃんは、コーヒーメーカーの液体をコップに入れて、どうぞ、と言わんばかりに、渡してくる。


「ほ、本当に、塩酸じゃないんですよね」


「おう、心配すんな、飲んでみろ」


 この人は軽いし謎に包まれているから、正直怪しくて仕方がない、そう思いながらも、コップに口を付けて飲んでみる。


「え、甘い、これって」


「ココアだよ」


「あ、まさか、れんちゃん、コーヒー飲めないんだ、ダサいですね」


「べ、べつにださくねーし、コーヒーだって飲めるし、好きなのがココアなだけだし」


 どうやら、れんちゃんは、少し子供っぽい一面もあるらしい、また、新しい一面を見つけた。


「さぁ、もう帰れ、おれも仕事あるから」


「うん、もう帰るね、ねぇ、れんちゃん、また来てもいい?」


「おう、勝手にしろ」


 なんだかんだ言って、やっぱりこの先生は軽いらしい。


——―――——―――——―――——――後日

「こ、このウォーターサーバーの中身って、まさか、塩酸じゃないよね」


「あ、アンモニア水だよ、冗談だけど」


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