第53話

 クライドが寝込んでから、一週間が過ぎた。

「クライド様、大丈夫でしょうか……?」

「ベティ様、クライド様からまたお便りが届いています」

「ありがとう、ロージー」

 ベティはロージーから封筒を受け取った。


 開けると中には『お見舞いの品とお手紙ありがとうございました。おかげですっかり良くなりました。今度、ベティ様の都合が良い日に我が家で一緒にお茶を飲みませんか? クライド』と書かれていた。

「ロージー、クライド様は風邪が治ったそうです。お茶会の手配をして下さいませんか?」

「承りました。何日頃にうかがいますか?」


「そうですわね……今週の終わりにうかがいたいと思います。少し待っていて下さいませ。私から、お返事を書きますから」

 ベティはそういうと、ウキウキとした足取りで自室に戻った。

 机の上に封筒と便せんを置き、春の訪れを思わせる若草色のインクで手紙を書いた。

『お手紙ありがとうございました。体調もよくなられたようで、ホッとしております。お茶会の件ですが、今週末はいかがでしょうか? ベティ』


 蝋で封をした手紙を、ロージーに渡す。

「これをクライド様に渡して下さい」

「はい、ベティ様」

 ロージーはフローレス家を出て、コールマン家に向かった。


「クライド様にお会いできるのも、久しぶりですわね」

 ベティは自室の窓から、コールマン家の方を見つめて微笑んだ。



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る