第46話

 二月になり毎日の生活に戻った頃、クライドからベティに手紙が来た。

 <修道院にて、当家使用人のロイスがマナー講習を行いました。皆、覚えが良かったとのことです。 クライドより>


「クライド様、約束を守って下さったのですね」

 ベティはロージーを呼ぶと、修道院の様子を見に行こうと提案した。

「ベティ様がおっしゃるなら……」

 ロージーは気乗りしない様子だったが、ベティの言う通りにご馳走をバスケットに詰め込んで出かける準備をした。


「それでは参りましょう、ロージー」

「はい、ベティ様」

 二人は馬車で修道院に向かった。

「バーニーさん達はお元気かしら」

「皆、元気だけが取り柄ですから」

 ロージーは心配そうに修道院の方を向いている。


 修道院に着いた。

 ベティとロージーは馬車から降りて、孤児達のいる建物のドアをノックする。

「こんにちは、おじゃましてもよろしいかしら?」

「はい、どうぞお入り下さい」

 バーニーがベティとロージーを出迎えた。


「今日はごちそうをもってきたんだよ、バーニー」

「ありがとうございます、ロージーさん」

 ロージーは他人行儀なバーニーを見て、少し寂しそうな表情を浮かべた。

「さあ、皆、ご馳走を持ってきて下さったベティ様にお礼を言おう」

「ありがとうございます。ベティ様」

「いいえ。さあ、冷める前に召し上がって下さい」


 ロージーがバスケットから、ローストチキンやサラダを取り出した。

「私も手伝います」

 クラーラ達は戸棚からお皿とフォークを出すと、いつも食事をとっている机に並べた。

「皆さん、マナーについての説明は難しくありませんでしたか?」

 ベティが尋ねると、バーニーが答えた。


「マナーを知っていれば、今より良い生活が送れると言われました」

「そうですか……」

 ベティはバーニー達が神に祈りを捧げてから、食事を始めるのを見てホッとした。

「良かったですわ。実は、クライド様のお使いの方と、バーニーさん達が喧嘩をしていないか心配しておりましたの」


 バーニーは吐き捨てるように言った。

「強い者の前では無力ですから、俺たちは」

「……?」

 ベティはバーニーの言葉に引っかかりを覚えたが、それ以上尋ねることはせず、バスケットを持ったロージーと一緒に屋敷に帰ることにした。

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