第13話
夜の礼拝で、クライドはベティを待っていた。
ベティに会うと、クライドは世間話をした後に訊ねた。
「ベティ様、今度のお城の舞踏会に一緒に行って下さいませんか?」
「まあ、素敵ですわね。是非、ご一緒したいです」
クライドの申し出を、ベティは快諾した。
舞踏会の日、フローレス家は馬車で王宮に向かった。
「今日は、クライド様とゆっくり楽しんでおいで」
「はい、お父様」
ベティは頬を赤らめて、頷いた。
王宮にはもう人が集まっていた。
「ベティ様、お待ちしておりました」
「クライド様、今夜はよろしくお願い致します」
二人は腕を組んで、王宮の中へ入っていった。
ベティとクライドが歩いていると、ひそひそ話が聞こえてきた。
「あら? いつもと違う組み合わせですわね」
「カール様はベティ様ではなく、ハリエット様を選んだらしいわ」
「でも、コールマン家のクライド様と一緒ですわ」
ベティは、声のする方を向くと笑顔でお辞儀をした。
「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
噂話をしていた令嬢達は、そそくさと逃げていった。
「ベティ様、強くなられましたね」
「クライド様がいて下さるおかげですわ」
ベティはクライドを見つめて微笑んだ。クライドの顔がほんのりと赤くなる。
「あれは? カール様とハリエット様がぽつんとしてらっしゃるなんて珍しい」
クライドがそう言ったので、ベティはクライドの視線を追った。
「そうですわね。いつもハリエット様には取り巻きの女性がいらっしゃるのに」
カールは、クライドとベティに気付くと、歩み寄ってきた。
「クライド様、ご機嫌麗しゅう」
「先ほどまではね」
クライドは冷たい笑顔で返事をした。
「お父様のご機嫌はいかがですか?」
「貴方に会うまでは、大丈夫でしょう」
カールは張り付いたような笑顔で去って行った。
「あら、カール様がクライド様に挨拶をしていますわ」
「厚かましいにもほどがありますね。社交界では、もうコールマン家に愛想を尽かされているという噂ですのに」
ベティとクライドは顔を見合わせた。
どうやら、カールは自滅したらしい。
「クライド様、踊りませんか?」
「ええ。そうしましょう」
ベティとクライドはカールの元取り巻きから離れて、踊り出した。
「あまり、気分の良い物ではありませんね」
「ええ」
クライドの言葉にベティは頷く。
「でも、カール様が手放して下さったおかげで、今の時間が楽しめているんですよね」
ベティはそう言って、取り残されているカールを哀れに思った。
「ベティ様、カール様にされたことをお忘れですか?」
「いいえ。カール様に管理されている農民達も可哀想ですわ」
クライドとベティは踊り終わるとテラスに出て、一息ついた。
「星が綺麗ですね」
「本当に」
「貴方も美しい」
「あら。クライド様、酔っていらっしゃるんですか?」
ベティは赤い顔でクライドを見つめた。
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