第12話

 コールマン子爵が屋敷に帰ると、カール・ヘザートンが屋敷の前で待っていた。


「これはヘザートン男爵、何か用でしょうか?」

「コールマン子爵、私の領地の農民が逃げ出したのですがご存じ有りませんか?」

「……当家に救いを求めてきたので保護しております」


 カールは舌打ちした、

「他家の問題に手出しするのはいかがな物でしょうか?」

「当家に助けを求めたのは、ヘザートン家の税が厳しすぎるせいではありませんか?」

 クライドが言うと、コールマン子爵が言った。


「クライド、お前は下がってなさい」

「……分かりました、父上」

 クライドが屋敷の中に戻るときに、カールは吐き出すように言った。

「若造が」


 カールのつぶやきに、コールマン子爵はいらだちを隠さなかった。

「私も同意見です。農民の話を聞いたところ、まともに食事も取れないくらい税が重いとのこと。やり過ぎだと思います」

 コールマン子爵は不機嫌そうに脚をカツカツと鳴らした。


「どこでもそんなものでしょう。農民は生かさず殺さずです」

 カールの不遜な言い分にコールマン子爵は眉をひそめた。

「ヘザートン男爵、子爵に向かってその言い方はないのでは無いですか? 口の利き方は気をつけた方が良いですよ」


 コールマン子爵は腕時計を見ると、眉間に皺を寄せて言った。

「お話は以上ですか? 私も忙しいのでこの辺で失礼致します」

 カールはそれ以上何も言わずに、コールマン子爵を睨み付けた。


 コールマン子爵は家に入ると、ため息をついた。

「まったく、礼儀のない者だったな」

「ベティ様の元婚約者ですが、ベティ様はカール様に婚約を破棄されたそうです」

「そうか、それは幸いだったな。あのような者と一緒になっても苦労するだろう」

 

 カールはコールマン子爵から、面倒な人物として嫌われてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る