第10話
ベティからクライドに手紙を送った翌々日、クライドから返事が届いた。
「お返事には何て書いてあるのかしら?」
ベティはドキドキしながら手紙を開けた。
そこには、<来週のメリーゴーランド、楽しみにしています。 クライド>と書かれていた。
「よかった、あら? なにか他にも入っているわ」
ベティが封筒をのぞき込むと、押し花が添えられていた。花はアザレアで、花言葉は恋の喜び。ベティの顔が一気に赤くなった。
「お母様お父様、私は来週、クライド様とメリーゴーランドを見に行きますわ」
「そうか、気をつけるんだよ」
父親は、まだ子どもだな、といいながらベティの頭を撫でた。
「ちょっと見に行くだけですから、子ども扱いしないで下さいませ」
ベティは父親の手から逃げ出した。
メリーゴーランドが来る日になった。
お昼ちょっと前に、ベティは出かける準備をし終えていた。
「そろそろ、クライド様の所へ行こうかしら?」
ベティが迷っていると、ドアの呼び鈴が鳴らされた。
「はい、どちら様ですか?」
「クライドです。今日はベティ様とお約束をしております」
ベティは慌てて、ドアに駆けつけた。
「クライド様!? 私がお迎えに上がろうと思っておりましたのに」
「いいえ、少しでも早くベティ様のお顔を見たかったものですから」
そう言うとクライドは、はにかんで微笑んだ。
「ベティ様とメリーゴーランドを見てきます」
「はい、ベティのこと、よろしくお願いします」
母親はベティとクライドを笑顔で見送った。
「それでは参りましょう」
クライドから差し出された手をベティは遠慮がちにつないだが、クライドは力強くつなぎ治した。
「ベティ様、人混みではぐれると危険です」
「はい、クライド様」
ベティは心臓が敗れてしまうかと言うほど、胸の高鳴りを感じていた。
広場には、もう人があふれていた。
「まあ、素敵。大きなメリーゴーランド」
「乗りますか?」
「……いいえ。私子どもではありませんから」
そういいながら、ベティの視線はメリーゴーランドに釘付けだった。
「大人、二枚お願いします」
「はい、どうぞ」
クライドはチケットを買うと、ベティの手を取って、メリーゴーランドの馬車に乗り込んだ。
「まあ、クライド様」
「ほら、子ども達が手を振ってますよ?」
クライドはそう言うと、子ども達に手を振り替えした。ベティも、一緒になって手を振っている。弾けそうな笑顔の子ども達がまた手を振り替えした。
「楽しいですわね」
「そうですね」
少しすると音楽が止まった。クライドはベティの手を取り、メリーゴーランドを降りた。
「少し、お腹が空きませんか?」
クライドが言うと、ベティも頷いた。
「そうですわね」
「あそこにパン屋が有りますね。入りましょうか?」
「そう致しましょう」
クライドとベティは、パン屋に入り、椅子に座ってクロワッサンとカプチーノをそれぞれ頼んだ。
クロワッサンとカプチーノは、すぐに運ばれてきた。
「いただきます」
「いただきます」
熱いカプチーノにクロワッサンを浸しながら食べる。
「おいしいですわ」
「そうですね」
クライドとベティは、店の中から町の賑わいを眺めていた。
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