第2話 推しと遭遇

 金曜日、二十時、仕事終わり。


 俺は今、なるたんに悪口を書く犯人のマンションの前で張り込んでいる。


「奴は必ずこの投稿と同じパーカーと帽子で帰ってくるぞ、多分若い女だな」


 俺のスマートフォンには、今日朝投稿されたパーカーと帽子を床に並べた写真が今映っている。この格好をした人物がここに現れたら、間違いなくそいつが犯人だ。こんな近くに住みやがって、気持ち悪いし、許せない。

 俺は五階建ての小さなマンションの出入り口にひっそりとしゃがみ込んで待つことにした。オートロックの作りなので、玄関のドアの前まで進むことはできない。ただ、外観は豪華だが、外から二階のドアは見え、わかりやすい作りとなっている。俺はここで、あのパーカーと帽子を待つことにした。

 時刻は気が付けば二十一時。もう一時間も待っている。そろそろかもしれないと緊張が増して、やっぱり辞めようかとも怖くなってきたが、とにかくやるしかない!なるたんの為に!俺は、手汗を増やす自分にそう言い聞かせていると、誰かがこちらに来る音がしたので、ハッと見た。もしかしたら、奴かもしれない!




「えっ!」




 音の方を向くと、歩いてきたのは……。




「え、えええ」

「え、あんた、かなりやばいファンの……」




「ななななななるたんんんんあああ!?」





 なるたんだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る