第3話 推しと誤解

 俺は今大変混乱している。どう見ても、なるたんが俺の前にいるからだ。なるたんの全てを理解している俺は、どんな姿でも、すぐにわかる。間違いなく目の前にいるのはなるたんだ。なんてことだ、パニックだ。夢か、夢なのか?本当に現実なのか?ほっぺをつねって、確かめ、俺は痛いことを祈った。


「痛い!痛いぞ!現実だ!」


ただでさえ、近づけないというのに、こんなところで出会えるなんて、かなりやばい。今にも死ねる。いやまて、俺の今日の目的を忘れていけないぞ。なるたんに、ここに居るのは危ないと伝えなきゃいけない、あの犯人がいるかもしれないのだから、伝えなきゃ……。



 そう思っていると、なるたんが叫んだ。



「ちょっと。なんであんたここにいんの!?ストーカーだわ!ストーカー!ここまで怖いやつだとは思わなかった!キモ!通報よ!」



 やばい、どういうことだ。もしかして、ファンがストーカーしていると勘違いしているのか。とにかく、このままだと捕まってしまう。たまにニュースで、行き過ぎたファンが捕まっているのを見るが、俺もそれと同じだと思われている、まずい。そんなつもりは俺にはないが、勘違いされたままでは、最低なファンで終わってしまう。俺を覚えていてくれているようで嬉しいが、このままでは俺の人生が終わってしまうぞ。とにかく誤解を解かなければ。



「ままままってくれ!違うんだ。なるたんがここに現れるなんて、知らなくて!俺は悪質コメントの犯人を殴りに来たんだ!ここに居るんだ、犯人が!俺は特定に成功したんだ!なるたんの為になんとかしようとして来たんだって!君の涙をもう、見たくなくて!」



 すると、通報しようとスマートフォンを操作していたのだろうかはわからないが、なるたんはスマホ操作の指を止めてケースの手帳をパタンと閉じ、俺の腕をグイッと引っ張ってマンションの中へ連れ込んだ。

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