『プリンセス オブ ホワイトキングダム』

 ある日。あるところ。

 平凡で退屈で、畑仕事と裁縫と、料理と洗濯と、そんなことしかやることのない一般的な生活を送っていたのは私。ミミミリアだ。

 私は今日も昨日も代わり映えのない日々を送っていた。家族とご飯を食べ、ときには友達と遊び、ゆったりと湯船に浸かり……。そう、幸せな日々を送っていた。

 しかしある時、私の身に異変が訪れる。

 それは、特殊な魔法。

 それは、奇跡の魔法。

 この白い国の中心では、白魔法と呼ばれている代物だった。

 初めは何も考えていなかった。村の少年が膝を擦りむいて泣いていたから「痛いの痛いの飛んでけ~」と愛の魔法を唱えただけだった。

 しかし、私がその魔法を唱えた途端、少年の膝は見る見るうちに回復していき、擦りむいた後も残さず、きれいさっぱりなかったことにしてしまったかのように、傷を治してしまったのだった。

 少年は無邪気に「お姉ちゃんありがとう!」と言っただけだったが、私はその言葉に変をできなかった。

 それから私はその出来事が夢幻でないことを確かめる雨にわざわざ怪我人を探すようになった。

 そしてある時、私の魔法が噂になった。

「ミミミリアは傷を治せる」

 その噂は村中に広がり、私は有名人になってしまった。村中から怪我人が集まるようになり、私は断るわけにもいかないので集まってきた怪我人全員に魔法をかけた。

 そして、それは私の運命が変わった日……。

「ミミミリアさん。あなたの魔法は非情に貴重なものです。国立中央学園でその奇跡の力を磨きなさい」

 この白い国を象徴するスズランのエンブレムを付けた騎士様が言った。

 それから私は半ば強制的に国立中央学園に連れていかれた。もちろん家族にお別れを告げる時間は与えられたけれど、しかし私は国立中央学園に行くことをそれほど望んでいなかった。

 お父さんとお母さんが「ミミミリアのような娘がいて本当に誇らしい」と言ってくれたから行くけれど、本当のところは平凡な暮らしを続けていたかった。

 しかし、そうくよくよ言ってもいられなかった。家族の期待を裏切ることはできないし、私の魔法をこのまま平凡な暮らしの中に放置するのは、この国にとって大きな損失であるらしいからだ。

 私は覚悟を決めた。

 この先にどんな運命が待っているのか分からないけれど、とにかく突き進もう。

 さあ、私の貴重で、波乱で、未知で、不安で、それでいて楽しい学園生活が幕を開ける。

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