第230話 FINALSTAGE
184:うぉおおおおおおおお!!!
やみくま: 勝ったぁぁああああ!!
GGG: 刹那あああああああああ!!
とめ:やっぱりお前が最強だよ泣
鬼丸:風間さんも、本当にありがとう!!
Michele:感動しました!!
刹那の勝利に世界中の人達が歓喜に沸いた。
それほど手に汗握る凄まじい戦いだった。勿論風間を失った悲しみもある。が、彼が居なかったら刹那は敗北していた可能性が大きい。
二人で共闘はしなかったけれど、この勝利は刹那と風間が力を合わせて捥ぎ取った勝利だった。
そして遂に、残るステージはあと一つ。
『コングラチュレーション! 驚いたよ、私が作り上げた最強の剣士を倒してしまうとはね。日本最強と呼ばれるだけのことはある。やはり人間が秘める可能性は神である私でさえ読み切れないようだ。感服したよ。さぁ、残るステージもあと一つ。上がってきたまえ、待っているよ』
エスパスが話し終えると、士郎と灯里は顔を見合わせる。
行こう、と言わんばかりに頷くと、ファイナルステージへと続く自動ドアを目指した。そんな二人に、刹那が一言だけ声をかける。
「決めてこい」
「……ああ」
「はい」
短く返事を返すと、二人は自動ドアの中へ入っていく。その姿を見送った刹那は、勝気な笑みを溢しながら呟いた。
「頼んだぜ、
◇◆◇
「な、なんだここは……」
「もしかして、宇宙?」
ファイナルステージの舞台は宇宙の中だった。
漆黒の闇に包まれてはいるが、無数に煌めく星々によって暗さは感じられない。後ろを振り向けば、美しく青い球体――第三惑星地球が見られた。
そんな宇宙空間の中にある平な決闘場の上に、士郎と灯里は立っていた。
テレビでしか見たことのない壮大で幻想的な景色に二人が目を奪われていると、エスパスの声が聞こえてくる。
「気に入ったかい? ファイナルステージに相応しい場所だろう」
「エスパス……」
「お父さん……」
二人の眼前に現れたのは、異世界の神エスパス。
今は灯里の父親である星野健太郎の肉体を扱っている。三年ぶりの父との邂逅に、灯里は嬉しさもあり戸惑いを感じていた。
二人が警戒する中、エスパスが嬉しそうに口を開く。
「よくここまで辿り着いた。世界を救う為の挑戦者がたったの十六人と聞いてそんなものかと呆れていたが、まさか本当にそれだけの人数で私が作った難関ステージをクリアしてしまうとはね。先程も言ったが、人間には底知れない力が宿っているようだ。まぁ、その過程で何人か犠牲になってしまったようだが、それは仕方ないことだろう」
「仕方がないだって?」
エスパスの軽率な言葉に怒りを抱く士郎だったが、ぐっと怒りを呑み込んで神に問いかける。
「戦う前に一つ聞きたい。お前は本当に日本を……世界を滅ぼすつもりなのか」
「勿論だ。私は一度言ったことは曲げない
「やめる気はないのか」
「ない。止めたければ私を倒してみろ」
「そうか……」
これ以上頼んでも無駄だと悟ったのだろう。
こうなればエスパスを倒してエクストラステージをクリアするしかない。士郎は灯里に顔を向けると、心配そうに尋ねる。
「灯里、大丈夫か?」
「私なら大丈夫。
父親に弓を引くことができるのか。
そんな士郎の心配を、灯里は決意の言葉で一蹴した。確かに父親と戦うのは躊躇われる。だけど神を倒さなければ父親を助けられないのなら躊躇う必要はない。
なによりここまで自分達を導いてくれた冒険者達。そして世界を救う為にも迷ってなんかいられなかった。
もう話はいらない。あとは戦うだけ。収納空間から武器を取り出して戦闘態勢に入る士郎と灯里に、エスパスもニヤリと口角を上げた。
「さぁ、世界の命運を分ける
もんじ:頑張れ!
LU:頑張ってください!
咲桜:絶対勝ってよ!!
宇宙空間に世界中の人間達による応援コメントが表示される。
皆が固唾を呑んで見守っていた。
菱形総理、合馬、倉島や日下部といった士郎の会社の同僚、アレクセイ、エマ・スミスといった士郎が関わってきた者達。班目、信楽、ミオンにアナスタシア、刹那といったこれまで戦ってきた冒険者達もエスパスが用意したモニターで見ている。
国境を越え、全ての国の人間達が
世界中の期待を背負う中、遂にファイナルステージの火蓋が切って落とされた。
「さぁ来い、ファイナルステージに相応しい戦いを存分に繰り広げようじゃないか!」
「テオフレイム!」
「バラージアロー!」
先手を打ったのは士郎と灯里だった。
士郎はバックラーを装着している左腕を掲げて灼熱の火炎を放つ。灯里が放った一矢は分散し、十数もの矢になってエスパスへと襲い掛かる。
全く躊躇のない攻撃に異世界の神は嬉しそうに口角を上げながら、迫り来る攻撃に対処した。
「ジ・クリエイション・アミナ」
透明の結界がエスパスを守護するように展開される。
火炎と矢の弾幕が直撃するも、結界には傷一つ入らなかった。初手を防がれた士郎は遠距離での攻撃をやめて、その場から一気に駆け出しエスパスへと迫る。
しかし、エスパスもそう易々と接近させるつもりはなかった。
「ジ・クリエイション・アミナ」
「なっ!?」
士郎の行く手を阻むように人ほどの高さの盾が五枚顕現する。同じスキルなのに一度目とは違う効果に戸惑って足を止めてしまう士郎へと、今度はエスパスが攻撃を仕掛ける。
「ジ・クリエイション・エポドス」
直後、エスパスの真上に十の魔法陣が展開された。その魔法陣から様々な剣が銃弾のように士郎へと降り注ぐ。
「ぐっ!」
降り注ぐ剣の雨の軌道を見極め、紙一重で躱したりバックラーで弾き返すも数が多過ぎて被弾してしまう。士郎を助けようと灯里がバラージアローで撃ち弾き余裕を持たせると、その隙に士郎はスカイウォークで跳躍し盾を飛び越える。
「テオフレイム!」
「ジ・メタスタシス」
空中から左手を翳して火炎を放つ。
火炎が着弾するも、エスパスの姿はどこにもなかった。嫌な予感がして背後を振り向けば、灯里の後ろに現れたエスパスが剣を振り上げている。
「灯里!」
「っ!?」
間一髪だった。士郎の呼びかけに反応した灯里が身体を半身にしてエスパスが放った斬撃を躱す。それだけではなく、躱し様に回し蹴りを繰り出した。
「はっ!」
「おっと危ない。父親を蹴ろうとするなんていけない子だね」
「ふざけないで!」
灯里の回し蹴りはエスパスの前髪を掠めるだけだった。父親の顔で挑発してくる神に青筋を浮かべる灯里は下がって距離を取りながら弓を引くも、剣で弾かれてしまう。その間に戻った士郎と合流した。
「平気か」
「うん、士郎さんのお蔭で何とかね。でも……」
「ああ……厄介だな」
難しい顔を浮かべる士郎と灯里。
異世界の女神アムゥルが言っていた。兄のエスパスは創造と時空を司る神であると。
その言葉通り、一連の戦闘で見せたエスパスの能力は創造と時空に由来するものだろうということが窺える。
ジ・クリエイション・アミナはあらゆる防御。
ジ・クリエイション・エポドスはあらゆる攻撃を創造し。
ジ・メタスタシスは恐らく空間転移だと思われる。
一つでも厄介なのに三つ組み合わせたら戦いのバリエーションが多過ぎて読み切れない。それでもあの能力を突破して勝たなければならなかった。
弱音なんて吐いていられない。
ここに辿り着くまで命を懸けて繋いでくれた仲間達の為にも、自分達を応援してくれる世界中の人達の為にも絶対に勝たなければならなかった。
「灯里、俺に合わせられるか?」
「勿論。士郎さんの道は私が作る。だから士郎さんは前だけを見ていて」
「はは、頼もしいなぁ本当に。頼んだぞ、灯里」
「うん」
「仕切り直しといったところかな。さぁ、君達の力を、人間の可能性をもっと私に見せてくれ。もっと私を楽しませてくれ! ジ・クリエイション・エポドス」
再び魔法陣が展開され二人に向けて剣が射出される。剣の射線から外れるように、士郎と灯里は左右に散開し反撃に出る。
「スラッシュウエーブ!」
「インパクトアロー!」
「ジ・クリエイション・アミナ」
士郎が飛ぶ斬撃を、灯里が衝撃矢を放つが、エスパスを守るように大きな手が召喚されて攻撃を握り潰されてしまう。
それでもいい。単純な攻撃が通る相手ではない。士郎と灯里は距離を詰めながら再び攻撃を仕掛ける。
「アローレイン!」
「ジ・メタスタシス」
灯里が放った雨矢に対してエスパスは空間転移で回避する。士郎の背後に現れたエスパスが奇襲を仕掛けようとしたが、何故か士郎はこちらを振り向いて左手を掲げていた。
(何っ!?)
「テオフレイム!」
「――ッ!?」
至近距離から放たれた火炎にエスパスは慌てて空間転移を発動するが、転移した場所にすかさず灯里の追撃が襲い掛かった。
「チャージアロー!」
「くっ!」
「スカイウォーク」
スキルの発動が間に合わないので仕方なく剣で溜矢を弾き返すと、士郎が空中を蹴って目と鼻の先まで肉薄していた。
「アスタリスク!」
「ぐっ」
「フレイムソード!」
*字の六連撃を剣で受け止めるが衝撃に耐えきれず弾かれる。続けて士郎が放つ火剣を回避しようと空間転移を発動しようとするが――、
「ジ・メタスタ――「パワーアロー!」――ッ!?」
図ったようなタイミングで放たれた豪矢がエスパスの眉間に直撃した。スキルの発動を阻害された神は士郎の火剣をまともに浴びてしまう。
「くぉぉ……ジ・メタスタシス」
今度こそ空間転移を発動したエスパスは、二人から距離が離れた空中に転移する。仕返しとばかりに創造の攻撃スキルを発動した。
「フハハ! これは防ぎきれまい!」
今度のジ・クリエイション・エポドスは剣の砲撃ではなく、全方位に向けた鉄の棘だった。剣よりも圧倒的に数が多ければ棘自体が小さくて回避する隙間もない。これならば防ぎきれまいとほくそ笑んだが、士郎と灯里がいつの間にか合流していることに目を見張った。
「テオフレイム!」
迫り来る無数の釘に豪炎を放つ。かなりの数を燃え消し、消し切れなかった棘はバックラーを盾にして防いだ。全てを防御しきれず士郎のHPは僅かに減ってしまったが、彼の背に隠れていた灯里は無傷である。
そして灯里は、士郎が守ってくれている間に次の攻撃を放つ力を溜めていた。
「シューティングソニック!!」
「ッ!? ジ・クリエイション・アミナ!」
空気を圧縮したような一筋の暴風がエスパス目掛けて飛来する。
凄まじい勢いで轟音を鳴らしながら襲い掛かってくる暴風矢に神は慌てて巨大な盾を顕現させた。
ズガガガガッと盾が削られる音が聞こえてくるが、エスパスに届く前に衝撃が消失する。危機を脱して安堵するエスパスだったが、盾が消えると同時に士郎の姿が目の前にあった。
「何っ!?」
「喰らえ」
真・鋼鉄の剣が赤色に光輝く。
「心刃無想斬!!」
「ぐぉぉおおお!?」
赤き一閃がエスパスの身体を捉え、上空から地上のフィールドへ叩き落とす。手応えがあった士郎は、スカイウォークで灯里の近くへと着地した。
「くっははは、恐れ入ったよ。まさかこの私がここまでいいようにやられるとはね。素晴らしいコンビネーションだ」
不気味に嗤うエスパスの言葉は負け惜しみではなく本心からのものだった。
まるで未来を見ているかのように、エスパスのやること為すことの一手先を読まれてしまっている。
空間転移の場所を読まれたのも。全方位攻撃を最小限の傷で防御する為に二人が合流したのも。シューティングソニックを防ぐ為にも巨大な盾を創造してしまったのもそうだ。あれは恐らくエスパス自身に目隠しをさせる為の攻撃だったのだろう。
こちらの手を読まれ、あまつさえ誘導されている。なんと末恐ろしい戦闘能力だろうか。恐らく今の士郎は【思考覚醒】が発動しているはずだ。
が、真に賞賛すべきは士郎ではなく灯里の方だった。
士郎は灯里に対して何一つ指示を与えていない。にもかかわらず、灯里は先を読んでいる士郎の思考を把握して完璧に息を合わせられている。
阿吽の呼吸どころの話ではない。神をも驚愕させる神がかり的な能力だった。
エスパスでさえも驚愕する程の力は、灯里の持つユニークスキル【
心から大切な者を守りたいと想った時に発動するそれは、
ただ、そのスキルの効果の前に彼女には大きな下地がある。
一緒に冒険者になってダンジョンを訪れたその日からこれまでずっと、灯里は士郎と共に戦い歩んできた。
最初の頃は士郎に当ててしまわないかと怖れや心配もあった。だけど、いつしか士郎の考えていることや行動が分かるようになる。それはきっと、彼の隣にいたら身に付かなかっただろう。
“士郎の後ろにいたから”こそ、“彼の背中を見続けてきたから”こそ身に付けることができた能力。
だから灯里は、絶対的な信頼と自信を持って士郎と立ち向かえるのだ。
「参ったね……ここまで完璧なコンビネーションを見せつけられては私でさえも対応が追いつかない」
「「……」」
「ならば、こちらも味方を創ろうか」
そう不敵に笑うエスパスは、両手を広げて呪文を唱えた。
「ジ・クリエイション。顕現せよ、
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