第209話 神様の質問コーナー
「お~お~、いいねいいね~。重要なことからくだらないことまで、凄い数のコメントが集まってるよ。皆そんなに私のことが気になるのかい? やれやれ、人気者は辛いなぁ」
「このっ!」
テレビに映るエスパスは、灯里の父親の身体で楽しそうに笑った。そんな神の横には視聴者が送信したコメントが見えるようになっていて、凄まじい速度で日本語や外国語のコメントが更新されていっている。
無限に押し寄せてくるコメントに対して満更でもなさそうにしている神を見た灯里は、憎々し気に歯を食い縛りながら怒りをあらわにしていた。
「できれば全部答えてあげたいところなんだが、質問の数が多いのから答えてあげようか。さてまずはそうだな……『あなたは本当に異世界の神ですか?』に対しての質問に答えてあげよう。
答えは「YES」だ。私はこちらの世界とは別の世界の神様だよ。こちらの世界の人間に分かり易く言うと、剣と魔法の世界と言えばいいかな」
ヨッティ:マジか!?
抹茶ケーキ:神キターーーーーー!!
MIO:unbelievabl!!
エスパスが質問に答えると、コメント欄がさらに盛り上がった。
メムメムが異世界から来たことは今や世界中の人間が知っていることだけど、ぶっちゃけた話、こことは別の世界が存在するっていうのが信じられないよな。
異世界なんてものはアニメや漫画とか架空のものじゃないか。それに加えて本物の神様なんてでてきたら、興奮してしまうのも仕方がないだろう。
「うんうん、盛り上がってるね~。この調子でドンドン答えてあげちゃおうかな~。次の質問は『どうして私達の世界の塔をダンジョンに変えたのですか』だね。この質問に答える前に先に言っておくと、私は三年前よりもずっと前からこちらの世界について知っていたんだ」
湯上りビール:なんやて!?
KT:いつから知ってんたんだろ?
「こちらの世界は魔法がない変わりに科学が発展しているが、私が科学よりも注目したのは“娯楽”なんだ。私が最も嫌いなものは“退屈”なんだけど、こちらの世界の娯楽は私を大いに満たしてくれた。沢山ある娯楽の中でも特に気に入ったのは、ゲームやアニメや漫画といった、君達でいう日本のオタク文化なんだよ」
社長:Japanese cultureスゲー!
Saori:なんか嬉しい♡
たーちゃん:日本のオタク文化はついに異世界にまで轟いてしまったのか…
「異世界にも迷宮があるからというのもあるが、ダンジョン系のゲームにハマってしまってね。遊んでいる内に私もダンジョンを作ってみたいと考えた。
それはもう楽しかったよ。設定を練ったり、ダンジョンごとに特色を替えてみたりね。ダンジョンで死んでもリアルでは死なない設定にしたのも、本当に死んじゃうと皆が遊んでくれないと思ったからだ」
あああ:どんだけハマってんだよw
バナナ:わかるわ~設定練るのって楽しくて仕方ないよね
「おっ、分かってくれるかい? 折角作ったんだからさ、君達に遊んでもらいたいと思ってね。それでこちらの世界の塔をダンジョンに変えたんだよ。えっ魔石や武器はどうしてくれるのかって? 金になる報酬があった方が君達はやる気が上がるだろ? 人間は欲が深いからね」
いぬい:バレてるww
タカシ:神様には全てお見通しってことか
「そういう
「大体女神が言っていた通りだね。こんなのが神だったのが運が悪かっただけの話だ。力がある分非常にタチが悪い」
何故世界中の塔がダンジョンに変貌したのか、三年越しにようやく判明した。特に深い理由はなく、全てはエスパスの気まぐれによるもの。
こちらの世界を知って、日本の文化を知って、人と同じようにアニメやゲームにハマって、遊んでいる内に作り手になりたいと思った。
自分の手で作ったダンジョンを遊んでもらいたくて、世界中の塔をダンジョンに変えてしまうのは、こちらの世界の人間からしたらとんだはた迷惑だ。
アムゥルが、エスパスが神としての仕事を放り投げたのは「飽きた」からと言っていたけど、本当にただ退屈だったってだけなんだ。
だからこそ腹が立つ。
お前の退屈凌ぎのせいで、どれだけの人達が苦しんだことか。妹の夕菜を囚われた俺の両親が、一瞬の内に家族を失った灯里がどれだけ悲しく苦しい思いをしたか。
自分の退屈を紛らわすためだけに多くの人を巻き込んだことが許せなかった。
「次の質問はYouTubeに関してが多いね。『どうやって配信しているのか』『YouTubeの会社の人間と接点はあるのか』『どうして配信しようと思ったのか』『グロ描写はどうなっているのか』とまぁ色々あるけど、これについては一つずつ答えてあげようか」
kkk:これ凄く気になってたからありがたい!
もっちーに:YouTube側と取引しているんじゃないかとか噂されてたしね
これに関しては俺もずっと気になっていた。
ダンジョンライブは今や世界トップのコンテンツと化しているけど、そうなったのには理由がある。
冒険者が剣と魔法を使って魔物と戦う映像は迫力満点で、それが映像ではなくてたった今現実に行われているからだ。
俺もそうだったけど、ライブで行われているからこそ人々はダンジョンライブに熱中した。
けど、色々と気になることはある。
ダンジョンに入っている全ての冒険者一人一人が配信されているのもそうだけど、いったい誰がどうやって撮っているのかとか、アカウントも無しでどうやって配信しているのかとか、何故BANされないのかとか。
今まで分からなかったことが、たった今本人の口から明かされようとしていた。
「私がライブ配信をしようと考えたのは、YouTubeの存在を知ったからなんだよ。十年くらい前からYouTubeが世間に認知されるくらい流行り出したと思うんだが、これは“使える”と思った。
ただプレイヤーにダンジョンを攻略してもらうのではなくて、その様子を多くの人に見てもらった方がより面白いしバズるだろうってね。だから利用することにしたんだ」
ライス大盛:そういえば流行ったのそれぐらいだっけ
こんてつ:まぁ大体は08年ぐらいから知っている人はいたけど、爆発したのは13~14年ぐらいじゃないか?
「YouTubeで配信することにしたのは、単に配信サイトの中でYouTubeが一番人気があったからだ。冒険者の配信や撮影とか、グロテスクの描写とか、そういうのは全部神パワーで押し通らせてもらっている。
簡単に言うとYouTubeのプログラムをダンジョンライブ用に作り替えたんだ、神パワーでね。一応サイト自体も運営が消せないようにしてあるよ」
Jun:神パワーsugeeeeeeeee!!
マハーカー:やりたい放題だねww
だんご四兄弟:へ~運営さえも関与できないから今まで野放しにしてたのか
「ふふふ、神なんだからそれぐらいデキるさ。君達は私がYouTubeの人間と秘密離に関係を持っていると疑っているようだけど、残念ながらそんな事はない。全部私が勝手にやっていることだ」
汁リア:な~んだ
ぺんぺん:これでYouTube黒幕説は否定されたな
「YouTubeの運営会社や、それまで頑張っていたユーチューバーたちには申し訳ないと思っているよ。でもダンジョンについての配信は全てYouTubeに設定しているから、広告料とかは彼等に入っているはずだ。
余り気にしたことはないけど、以前より儲かっているんじゃないかな? ユーチューバーに関しては、ダンジョンライブよりも面白い動画を頑張って作ってねという感じかな」
WD:草
ちゃこ:ユーチューバーがんばえ~w
Kira:ダンジョンライブが出てきてからユーチューバーはオワコンになったからな~
「思っていた以上にやりたい放題だったな」
「癪に障るが、それだけ
エスパスの話を聞いて唖然としていると、メムメムが気に入らなそうに相槌を打つ。
ダンジョンライブについての謎は明らかになったのはいいけど、その内容は神パワーの一言で片付けられてしまうものだった。
「さて、YouTubeやダンジョンライブについてはこんな感じかな。次はそうだね、『ダンジョンは全て攻略されるとどうなりますか?』『クリアはあるのでしょうか』、この辺りの質問に答えてあげようかな」
えびせん:おっ、教えて教えて!
T1:何階層まであるのかな? やっぱり100階層がラストかな?
「初めに言っておくと、最終階層を攻略すればゲームクリアとなり、ダンジョンも消滅するようになっているよ。
先ほども言ったが私はゲームが好きなんだ。エンディングのないゲームなんてクソゲーでしかないだろ? 私はクソゲーなんてものを作る気はないからそこは安心して欲しい。ただ、最終階層が何階層かは秘密だ。100階層かもしれないし、それ以上かもしれない」
ムチコ大佐:流石神様! わかってる!
マヨラー:え、、クリアするとダンジョンなくなっちゃうんだ。それはそれで嫌だな、、
牛タン:ずっとダンジョンライブ見ていたい
「ふふ、ダンジョンライブを惜しんでくれるのは製作者としてとても光栄だよ。他にはどんな質問があるかな? ふむふむ、『神様は日本人なのですか?』『神様っておじさんなんですか?』と、どうやら私の見た目についてもかなり気になっているようだね。そんなに気になるなら教えてあげよう」
棘キッス:神様がおじさんとかウケるw
momo:実はちょっとタイプなんだよね
「この姿は私本来のものではない。星野健太郎という人間の身体を借りているんだ。こちらの世界で人気者になっている、星野灯里の父親だよ」
ドレミ:嘘、このおじさんがアカリちゃんのお父さんなの!?
にこちん:何でアカリちゃんの父親の身体を借りてるんだろ?
「よくも、お父さんを!」
「灯里……(やっぱりそうだったのか……)」
灯里の父親の身体を借りていると言ったエスパスに怒りを募らせる灯里。アムゥルが夕菜の身体を借りたのと同じように、エスパスも灯里の父親の身体を借りているのだと予想を立てていたが、どうやら当たっていたようだ。
灯里としては腸が煮えくり返っていることだろう。
ダンジョンに囚われた上に、元凶である神に父親の身体を弄ばれているのだから。
「お~凄い反応だね、流石は大人気の灯里ちゃんだ。皆色々言っているけど、私が彼女の父親の身体を借りているのは特に意味はないんだ。強いていうなら、私が灯里ちゃんのファンってだけ。ここだけの話なんだけど、灯里ちゃんファンクラブにも入会しているんだよ」
おここ:灯里ちゃんのファンクラブって非公式だった気がw
ジュゴン:え…同担拒否なんだが…
びー:神をも虜にしてしまう灯里ちゃん…罪な女だよ
「ふふ、推しの子に注目してもらいたいって感じかな」
「ファンクラブ? 推し? ふざけないで……絶対に許せない」
「落ち着けよアカリ、奴は君をからかっているだけだ。君が配信を見ていることもわかっていてね」
「なら尚更許せないよ」
灯里に同意する。きっと今、エスパスは灯里を煽って楽しんでいるんだ。なんて悪趣味な神なんだろうか。
「もっと質問に答えてあげたいんところなんだけど、どうやらこの国の政府に動きがあったみたいだね。そちらを見てみようか」
「これは……」
何かに気がついたようなエスパスがパチンと指を鳴らすと、先程映したゲートの場所の映像に切り替わる。
そこには複数のゴブリンがいて、さらに自衛隊らしき集団が側にいたのだった。
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