第108話 D・A
「D・Aのミオンでーす! よろしくお願いしまーす!」
「シオンです。よろしくお願いしますわ」
「……アナスタシア」
(うわぁ、生D・Aだ!!)
顔合わせのために待合室に入ってきた可憐な少女たちを目にし、心の中で歓喜する。
先程までワークオフィスの空間を醸し出していた待合室が、一瞬でライブ会場のような明るい雰囲気に包まれた。
それはやはり、彼女たちが華やかでオーラがあるからだろう。
というか三人共凄く可愛い。
最初に挨拶したミオンこと
少し茶色がかった長髪をポニーテールに纏め、天真爛漫で笑顔が素敵な女性だ。
D・Aの中でも、THE・正統派アイドルっぽい印象がある。
ダンジョンライブでも元気一杯で、視聴者たちは彼女から沢山の癒しと元気を貰えている。
次に挨拶したのはシオンこと
金色の艶やかな長髪はウェーブがかかっており、綺麗かつ凛とした顔立ちに、抜群のプロポーション。
彼女はお嬢様キャラとなっているが、実は東北地方出身で、ダンジョンライブでも時々方言が出てしまっている。
龍宮寺という名前かつお嬢様キャラなのに、バリバリの方言を使うギャップに多くのファンが魅了されていた。
最後に挨拶したのは、最近D・Aに仮加入したロシアの歌姫、アナスタシア=ニコラエル。
銀色に煌めくセミロングの髪、人形のような端正な顔、澄んだ碧眼。ロシア美人とはまさに彼女のことを言うのだろう。
小さくてあまり聞き取れなかったが、彼女が発した透明な声を聞くだけで鼓膜が癒える気がした。
アナスタシアが歌う時は凄い迫力があるのだが、普段は大人しくて人見知りする女の子だ。ダンジョンでアレクセイのパーティーと一時的に組んでいる時も、全然喋らない。
人見知りなのに歌う時は別人になるので、ファンはそのギャップにやられているのだ。
因みに、アナスタシアはまだアイドル名をつけられていない。
他の三人が
この三人に、音無かのんことカノンを入れた四人が、今のD・Aである。
四人とも個性があり、そしてとびっきり可愛かった。
いや……可愛いのは可愛いのだが、それにプラスしてオーラがある。キラキラしているというか、一般人にはない雰囲気が滲み出ているのだ。
そのオーラに圧倒されていると、生アイドルとの対面に楓さんと島田さんが大袈裟に感激している。
「生のシオンちゃん……なんて可愛いんだ。生きててよかった」
「ヤバい……意識が飛びそうです。興奮して鼻血が……」
「……」
なんだろう……自分よりも大きいリアクションを見てしまうと、逆に冷静になってしまう。
楓さんは鼻を抑えて上を向いているし、島田さんは瞼を閉じて昇天しかかってるし。喜び方がガチなんだけど……。
二人の反応にヒいていると、ミオンが明るい笑顔で灯里に声をかける。
「あー! あなたが灯里ちゃんでしょ!?」
「えっあ、はい」
「だよねぇ! 関口さんから聞いたよ、D・Aの誘いを断ったんだって。なんで入ってくれなかったんだよ~、灯里ちゃんが入ってくれたら絶対楽しくなったのに~」
「えっと……ごめんなさい。アイドルに興味がなかったから」
「そっか~、興味なかったらしょうがないよねぇ。でも、やりたくなったらすぐに言ってね! 関口さんがなんとかするから!」
元気だったり落ち込んだりまた元気だったりと、ミオンは感情表現が豊かだな。彼女の勢いに灯里がタジタジになってるよ。まぁ、そういうところが素敵なところでもあるんだけど。
というか、灯里がD・Aの勧誘を断ったことはメンバーも知ってるんだな。
「それで、彼女が例の?」
「どうも、ボクが例の異世界人さ」
「うわー! あなたがメムメムさん!? 本当に耳が長いんだね!」
シオンが視線を投げながら問うと、メムメムはニヤリと口角を上げながら肯定する。
すると、他の三人もメムメムに注視した。やはり異世界人のメムメムは注目の的になるよな。
でもシオンはすぐにメムメムから視線を外すと、今度は俺たちを見回しながら、
「それであなたたちが許斐さんに、五十嵐さんに、島田さんですわね」
「シオンさんに名前を覚えられてる!」
「いやーもう死んでもいいかも」
ちょっと二人とも、そろそろ現実に帰ってきてくれよ。
楓さんに関しては完全にクールキャラが崩壊してるからね。
胸中でそう突っ込みながら、今度は俺たちがD・Aに軽く自己紹介をする。
挨拶を終えると、関口さんが話を仕切っていく。
「では、顔合わせも終わらせましたし早速ダンジョンに行ってもらいます。スタート階層は二十階層からでお願いします」
「えっ? 二十階層ですか?」
関口さんの話に疑問を抱き、口を挟んでしまう。
てっきり、探索する階層は十層あたりだと思っていたのだ。というのも、アナスタシアはまだ日本に来日したばかりで、東京タワーダンジョンをそれほど攻略していないのではないかと思ったからだ。
他の国のダンジョンをどれだけ進んでいても、違うダンジョンに入る時は必ず一階層から始まる。
まだ東京ダンジョンを探索し始めてから一週間も経っていないのに、もうアナスタシアは二十階層まで踏破しているということなのだろうか。
俺の疑問を、関口さんではなくカノンが答えてくれた。
「シローちゃん酷いのにゃ、私たちのダンジョンライブを見てくれてないのにゃ。とっくのとうに、ナーシャは私たちと二十二階層までクリアしてるのにゃ」
「そーだぞシローさん、ちゃんと見てよね!」
マジか……一週間もしない内に二十階層まで踏破したのかよ。どれだけ速いペースで探索したんだろうか。
まぁ、D・Aが一緒についていれば不可能ではないと思うけど。
あと何でミオンも俺のことを名前呼びするのか解せないんだけど。
「今カノンが説明した通り、アナスタシアはすでに二十二階層まで攻略済みですのでご心配及びません。なので二十階層からお願い致します」
「そうと決まれば早く行こうよ! 時間が勿体ないもん!」
「分かりました。じゃあメムメム、彼女たちにも認識阻害をかけてもらえるか」
「お安い御用さ」
「許斐様、認識阻害とはなんでしょうか?」
尋ねてきた関口さんに、俺はメムメムの認識阻害の魔術を説明する。
その魔術をかけると、他人から自分であると認識されなくことを。そう説明すると、関口さんは「成程……」と口に手を当て、
「許斐様方がマスコミや一般人、それに冒険者からも認知されなかった理由はそういう仕組みだったのですね」
「はい、それがなかったら今頃色んな人に捕まってました」
「はぁ……魔術って便利ですわね」
シオンがため息をつきながら納得している間に、メムメムがパチンと指を鳴らして全員分に認識阻害の魔術をかける。
それを確認した俺は、みんなに告げるのだった。
「それじゃあ、行きましょうか」
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