第58話 宝箱
「キラービー3、メイジ1、灯里さんはキラービー、士郎さんはメイジをお願いします」
「「りょーかい!」」
モンスターとエンカウントした俺達は、楓さんの指示によってそれぞれ動き出す。
俺は後方で呪文を唱えている
メイジとの距離を縮めると、奴は杖を掲げて呪文を唱えた。
「
杖から半透明の風の刃が撃ち出され、真っ直ぐに飛来してくる。
だけど俺はそのまま突っ込んだ。何故ならば、楓さんが対処してくれると信じているからだ。
「マシルド!」
楓さんの呪文が後方から聞こえた瞬間、眼前に半透明のバリアが展開される。その障壁は風の刃を全て弾いた。
マシルドは、【魔法盾】スキルで覚える対魔術壁だ。術者が見える任意の場所に展開できる優れた魔術である。しかし魔術以外の打撃などには余り効果がなく、スライムの体当たりですら打ち破られてしまう。だけど魔術を使ってくる相手にはかなり有効な魔術だ。
「はぁあああ!!」
「ギャーー!」
メイジに肉薄し、一太刀で首を落とす。メイジは魔術に特化しているため、普通のゴブリンよりも肉弾戦が苦手で耐久力も低い仕様になっているため、近づけば倒しやすい敵だった。だけど戦うには注意しなければならない。ウインドカッターもそうだが、メイジの魔術は威力が高く下手したら一撃で死んでしまうからだ。
油断した冒険者が首を落とされたり焼き殺されたりした場面をダンジョンライブでも何度か拝見している。厄介なモンスターなので、見つけたら一早く倒さなければならない敵だった。
振り返ると、灯里が二体目のキラービーを撃ち殺し、残りは島田さんがデスサイスで粉々に斬り裂いていた。
やっぱり島田さんのデスサイスの威力ヤバ過ぎだろう。どこで手に入れたか気になって聞いてみたら、どうやら引退を考えていた冒険者に無償で貰ったらしい。鑑定してみたらかなりレア度が高い代物だそうだ。
威力と切れ味が高いけど、そのかわりステータスの幸運値が0になってしまうデメリットがある。0だとラストアタックをした場合アイテムがドロップしないのが苦しいところだ。
まあ彼はヒーラーだから滅多にモンスターと戦わないんだけどね。
『レベルが上がりました』
「おっ、久々だな」
脳内に直接、機械染みた声が聞こえてくる。オーガを倒して以来レベルが上がっていなかったから、かなり久々に感じられる。
新たにモンスターがポップしないか注意しながら皆に近づくと、お疲れ様と言いながら尋ねる。
「レベルが上がったみたいだから、ちょっとステータス確認していい?」
「あっ、私もレベル上がりました」
「残念だけど僕は上がってないな~」
「私もです。モンスターの警戒はこちらでしますので、二人共楽に見ていいですよ」
どうやら灯里も上がっていたらしい。楓さんと島田さんは上がらなかったそうだ。まあ二人は俺達よりレベルが高いからな。
お礼を言って、灯里と同時に合言葉を口にする。
「「ステータスオープン」」
目の前に出てきたウィンドウを確認した。
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許斐 士郎 コノミ シロウ 26歳 男
レベル:19
職業:魔法剣士
SP:90
HP:300/380 MP:160/290
攻撃力:350
耐久力:295
敏 捷:300
知 力:285
精神力:335
幸 運:285
スキル:【体力増加1】【物理耐性2】【筋力増加1】【炎魔術3】【剣術3】【回避2】【気配探知2】【収納】【魔法剣1】【思考加速】
ユニークスキル:【勇ある者】
称号【キングススレイヤー】
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使用可能なSP 90
取得可能スキル 消費SP
【体力増加2】 20
【炎魔術4】 40
【剣術4】 40
【魔法剣2】 20
【回避3】 30
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隻眼のオーガを倒したらいっきに2レベルも上がり、今回でレベルが19になった。
そして新たに【勇ある者】というユニークスキルを獲得していた。これは多分、オーガを倒したことで獲得したんだと思う。
まさか俺にもユニークスキルを得られるとは思っておらず初めて見た時は大いにはしゃいだが、スキル名をタップしても???になっているし、能力の詳細が分からない上にどうやって発動すればいいかも分からない。
ネットで調べてみたけど【勇ある者】というスキルの情報は載っていなかったし、やっぱり俺だけに発現したユニークスキルみたいだ。
因みに灯里も【想う者】というユニークスキルを獲得したらしい。俺と同じように能力の詳細は分からなかったようだ。まあユニークスキルっているだけで価値のある物だし、あるに越したことはないんだけどね。
さて、SPも90あることだし、新しくスキルを取得してもいいか。
という事で俺は、新たに60SPを使用して【体力増加2】と【剣術4】を取得した。その二つを取った理由としては密林ステージで必要だと感じたからだ。
炎系のスキルは使いづらいし、密林ステージは草原ステージよりも体力を結構使うから【体力増加2】を取って少しでも楽がしたかったのだ。
ステータスを確認した俺は、周囲を警戒してくれていた楓さんと島田さんに声をかける。
「ありがとう、もう終わったよ」
「私も!」
「そうですか。では、先に進みましょう」
「うん」
俺達は十二層の探索を再開したのだった。
◇◆◇
「これってさ……」
「うん……」
「宝箱ですね」
「へーこんな感じになってるんだ。僕も初めて見たなぁ、本当にゲームに出てくるのみたいだね」
モンスターと戦闘を繰り返しながら探索していると、俺達は大きな宝箱を発見した。
その存在はネットでも知っていたし動画でも見たことあるけど、島田さんが言ったようにゲームっぽい見た目だ。
土色をベースにして、赤い装飾が施されている木箱。宝箱の中には基本、アイテムが入っている。ポーションや武器や防具に魔石と種類は豊富だが、中には一つ何百万円もするレアアイテムが入っている時もあるのだ。
だが宝箱はメリットだけではなく、デメリットがある時もある。それは宝箱に擬態したモンスターだった場合や、トラップの発動だったりする。だから開ける時は慎重に行わければならない。
「どうする?」
「今鑑定しましたが、モンスターではないです。トラップの可能性もありますが、それを恐れて見逃すのは惜しいですから、開けてみるのが無難です」
「僕は幸運値が0だから、誰かに任せるよ」
「あっ!じゃあ私が開けてみたい!」
皆に相談すると、灯里が挙手をした。楓さんの鑑定によると危険はなさそうだし、灯里に開けさせてみるか。
「な~にが出てくるかな~」
ワクワクしながら宝箱を開ける灯里。
蓋を開けた瞬間、箱の中が突然眩い光を放った。
「いけません、トラップです!」
「灯里!」
「きゃ!?」
咄嗟に灯里を突き飛ばすと、強い閃光が俺を包んだ。
その光に包まれた瞬間、俺の意識は失われていくのだった。
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