第17話 わたしと仲良く?


あきれた」


 とリム。


「普通、もっとパニックに……何よ?」


「リムもありがとう」


 わたしの言葉に彼女は戸惑う。


「だから何でそんな――」


「リムは悪役になってでも、サヤちゃんを守りたいんだね!」


 はぁ――とリムは溜息を吐いた。

 わざとわたしを試すような事を言ったのだろう。


 ――バレバレなんだから!


「これだけは言っておくから――ユズが記憶を取り戻して、姫様の敵になるようなら……」


「わたしを殺すんだよね――うん、分かってる!」


 そう言って、わたしは立ち上がると、


「やっぱり、サヤちゃんを呼んで来るよ」


 笑顔で出口へと向かう。

 リムとヒナタちゃんが何やら言っていたが、良く聞こえない。


 そして、脱衣所へ向かう途中で、サヤちゃんとぶつかりそうになった。


「きゃっ!」


 とわたしは悲鳴を上げて転びそうになるも、


「まったく、貴女あなたは何がしたいの?」


 サヤちゃんが手をつかみ、助けてくれた。


「あはははは……ありがと」


 元々はサヤちゃんを探しに来たのが原因なんだけど。


(まぁ、一応……お礼は言っておこう)


「白騎に言われたから、来てあげたの」


 とサヤちゃん。

 素直じゃないのは一緒だが、リムとは違うタイプだ。


貴女あなた……私が来ないと、また裸で城内を走り回るそうね」


 とんでもない事を言ってくれるモノだ。


「そんな事しないよ!」


 ――シキ君め!


「とんだ変態ね……」


「誤解だよ!」


 わたしの弁明がむなしく響き渡る。


「……」


「…………」


「……………………」


「――冗談よ」


 サヤちゃんは口元を押さえて、クスクスと笑う。


「まぁ、貴女あなたと仲良くするには――そう言えばいい――と教えてくれたのは白騎だけどね」


「サヤちゃんが……わたしと仲良く?」


 ――ハッ!


(さては偽者⁉)


「本物よ」


 サヤちゃんは笑顔で、こぶしを作って見せてくれた。



 ▼▲▼  ▼▲▼



「二人とも! サヤちゃんが来てくれたよ」


 そんな、わたしの言葉に、


「ひ、姫様!」


 おどろくリム――思わず、立ち上がってしまったようだ。

 一方――


「姫様!」


 と喜ぶヒナタちゃん。目をキラキラと輝かせている。


 サヤちゃんは――ヒナタちゃんの両親を殺した――といたばかりなのだが、そんな感じは一切しない。


(どう見ても、仲の良い姉妹だよね)


「コ、コイツがまた失礼な事を――申し訳ありません!」


 頭を下げるリム。


(わたしに対しては、今のリムの発言の方が失礼だよ!)


 大丈夫よ――とサヤちゃん。


「今更、気にしても仕方がない」


「そうですね……今更ですね」


 ――何よ、二人して!


(その温かい視線、止めて欲しいんですけど……)

 

 ――どうして、そんなあきらめたような顔をするの?


「そ、そんな事より、お風呂ではバスタオルを取ろうよ!」


 わたしはサヤちゃんが身体に巻いているタオルを盗った。


「ちょ、止めなさい!」


 と身体を隠すようにしゃがみ込むサヤちゃん。


(女の子同士で、そこまでずかしがる必要はないと思うけど?)


 ――ハッ!


 (もしかして……身体に傷が――)


「無い?」


「無くて悪かったな……」


 ――いえ、胸の話ではありません。


(だから、そんなににらまないで!)


「姫様、綺麗!」


 とヒナタちゃん。


 ――ナイスアシスト!


 確かに、色白で引き締まった綺麗な身体だ。


(べ、別にわたしの身体がだらしない――という意味じゃない!)


 ――断じてない!


「ひ、姫様……こちらに――」


 とリムはバスチェアを用意する。


「ちょっと待って!」


 とわたし――恐らく、リムはサヤちゃんの身体を洗うつもりなのだろう。

 ヒナタちゃんもそれに気が付き、準備を始める。


 多分こういうのも、サヤちゃんが皆と一緒に入りたくない理由かも知れない。

 だが――


「先に化粧を落とすべきよ――って、何もつけてないの?」


「まだ、必要ないだろう」


 確かに、年齢的には中学生だ。


(でも、もう少し興味持とうよ……)


「じゃ、じゃあ……シャワーを浴びて湯船に入るのが先よ! 肩までしっかりとかって、老廃物を毛穴から排出するの!」


 ――身体を洗うのはその後よ!


「そういうモノか?」


「そういうモノよ!」


(わたしみたいに美人じゃない女の子は、色々と努力しないといけないの!)


 美少女三人が目の前に居る所為せいだろうか……何だか、急にむなしくなる。


 ――負けてない! わたし、まだ負けてないんだから!


「じゃあ……言うこと聞いてくれたら――バストアップの体操を教えて上げる」


 冗談で言ってみたのだが、


「フンッ、興味は無いが、モノはためしというからな――」


 とサヤちゃん。続いて、


「あ、あたしも興味ないけど――そこまで言うのなら仕方がないわね」


「お姉ちゃん、教えて!」


 リムとヒナタちゃんまで興味を示す。


 ――うん、どうやら思った以上に食いつきがいいようだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る