第16話 心が大切なんだって。
――あ~、広いお風呂って、いいよね♪
「
「お風呂だから、反響しているだけよ……」
リムに突っ込まれる。
わたしとリムは無事に『幻舞城』に戻って来る事が出来た。
報告も兼ね、お風呂でも一緒に――と思ったのだが、肝心のサヤちゃんには断られてしまった。
(気が向いたら行く――とは言ってくれたど……)
よって、今はヒナタちゃんも呼んで、三人でお風呂に入っている最中だ。
「知っている? ヒナタちゃん――空って青いんだよ!」
「知ってるよ、お姉ちゃん」
わたしはヒナタちゃんの頭を洗ってあげている。
「ヒナタちゃんは物知りだね――痛くない?」
大丈夫だよ――とヒナタちゃんは答える。
肩の辺りで切り揃えられた黄金色のショートボブ。
――リムといい、髪が綺麗で
(何か
「
「お姉ちゃんの居た世界の話? ここの空はずっと真っ暗だもんね」
ヒナタちゃんの白くて綺麗な肌。
いったい、この
「はい、流しまーす。目を
わたしの言葉に、ヒナタちゃんは素直に従う。
次はトリートメントだ。
「サヤちゃんにも教えて上げないと――後、海も見て来たの!」
「姫様はきっと知ってるよ――でも、ヒナ……海は見た事ない」
「海はねぇー……広くて大きくて、キラキラして――凄いよ!」
「凄い?」
「うん、凄いよ」
わたしは海を知らなかった。
わたしがあんなにも感動した理由は――やはり、異なる世界の人間だからだろうか?
「はぁ~、サヤちゃんも早く来ればいいのに……」
「いいのにねぇ」
わたしはヒナタちゃんの頭を洗いながら、そんな話をしていると、
「姫様は来ないわよ」
リムが
まぁ、そうだろうなぁ――とは思ったので、シキ君には相談済みだ。
(シキ君は――任せておいて――と言ってくれたけど……)
――サヤちゃん……来るのかな?
「どうして?」
ヒナタちゃんにシャワーしながら、わたしは
「自分の事が嫌いだからでしょ……」
――はて? 誰もサヤちゃんの事を嫌ってはいないと思うのだけれど。
(理由を
わたしが悩んでいると、
「姫様は、自分が汚れている――って言っていたよ」
とヒナタちゃん。最後にリンスで仕上げだ。
(サラサラなので、必要ない気もするけど……)
リムはヒナタちゃんを
「ヒナ達が住んでいた世界は【偽りの世界】で――いずれは元の世界へと
「分かっていると思うけど――あたし達がさっきまで居た世界――アレが元の世界よ」
とリム。
(わたし達を【怪異】と呼ぶ連中が住んでいる世界だよね)
ネムちゃんみたいな
「ユズの居た【偽りの世界】が、元の世界へ
正確には、わたしの記憶というより、わたしが関わった人達の記憶だろう。
(服の話は要らない気がするけど……)
つまり、世界を修復するという事は、【偽りの世界】を無かった事にする――という事らしい。
【偽りの世界】に居た人間達は、当然のように元の世界での暮らしに戻るようだ。
――異物である『わたし』だけを残して。
「姫様は殺したの――【怪異】に取り
「きっと、ユズの大切な人も……殺したのよ」
――え⁉ ヒナタちゃん? リム?
(何それ……どういう事⁉)
「
「だから、元の世界に行っちゃいけないの……」
――何それ……二人とも怖いんですけど。
(でも、冗談ではなさそうね)
「【怪異】が入り込んだ世界は、
とリム。それは知っている。
シキ君から最初に教えて
「世界から【怪異】を取り除くには、
とはヒナタちゃん。
――つまり、わたしは【怪異】で、わたしを世界に
(サヤちゃんは――その人を殺した――という事?)
「記憶を取り戻す――それと同時に【怪異】の姿を取り戻して、姫様に敵対する
ウサギのユズじゃ……
「ヒナ達は姫様に
それが――わたし達【怪異】が、人の姿で居られる条件なのだろうか?
「正確には、【怪異】だった者が【人】になった存在かしら――」
ヒナタに感謝しなさい――リムは付け加える。
「状況から見て、ヒナタが【術】を掛けてくれたから、人の姿に戻れたのよ」
(そうか、あの時――ヒナタちゃんが
「ヒナタちゃん……ありがとう」
わたしの言葉に、ヒナタちゃんは首を横に振ると、
「ヒナね、【術】はあまり得意じゃないの……上手くいったのは偶然なの」
「そっか――」
わたしはヒナタちゃんを抱き締める。
リムの件でも分かった。
――【術】を使うには、心が大切なんだって。
「ヒナタちゃんの優しさが、わたしを人間にしてくれたんだね」
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