第8話 こんなのわたしじゃない
「お兄様、お兄様、お兄様、お兄様……」
――ちょ、ちょっと!
(
――怖いっ!
わたしが暴れると、
「あら、失礼……あたしとした事が――えっと、『カボス』だったしら?」
(いえ、ユズよ――
――間違えるにしても、『レモン』とか『ミカン』にしなさいよ!
「何よ……キィキィ
(完全に
――って、アレ?
(言葉が通じないの?)
サヤちゃんやシキくんとは、意思の
「まぁ、どっちでもいいわ――そんな事よりも、お兄様に抱かれるなんて……
(
――え?
わたしは身体を揺らし、慌てて彼女の腕から逃げた。
(だから言ったでしょ! 安定しないって――)
飛び降りるのには多少、勇気が必要だったけれど――無事、着地に成功する。
しかし、振り返ったわたしが見たモノは――
――も、燃えてる⁉
リムちゃんの髪の毛から、赤い炎がメラメラと燃え
――怖っ!
事態が飲み込めず、恐怖したわたしは、その場から逃げ出す。
「ちょっと、待ちなさい!――って……あーっ、またやってしまった……」
リムちゃんの声が、後ろで
▼▲▼ ▼▲▼
――まったく、何だったの?
いいえ……恐らく、アレが【異能の力】なんだよね。
どうやら、リムちゃんは【火】を使うらしい――
(コントロール出来ていないみたいだったけど……)
――それは、わたしも同じね。
それにしても、困った事になった。
このお城――【
――いや、すみません……わたしが迷子になっただけです。
迷子センターは
わたしがキョロキョロと探していると――
「おっと……何だ? ウサギか……」
頭上から男性の声がする。
残念ながら、シキ君ではないようだ。
――すまんが、迷子だ。道を教えてくれんか?
ピョコリと右手を上げて挨拶する。
「へぇー、可愛いじゃねぇか……」
――あら、そう?
(良く言われるの――なんちゃって!)
その男性はシキ君よりも頭一つくらい背が高くて、
わたしの好みのタイプではないけれど、イケメンの部類には入るようね。
年齢は同じか、少し上といったところかな。
彼はしゃがむと、慣れた手つきでわたしを抱きかかえた。
同じ男性でも、シキ君より力強く――手もゴツゴツして、一回り大きな感じがする。そして、安定していた。
――
(
「何だ? 迷子か――って……どうせまた、ヒナタが連れて来たんだろ」
――いいえ、迷子です。
(どうやら、彼とも意思の
――困ったわ。
彼はその大きな手で、わたしの頭から背中にかけて、優しくゆっくりと
見かけによらず、
――はうっ、ふわわっ!
「お、気持ちいいか? じゃあ、これはどうだ?」
そう言って、調子付いた彼は、わたしの身体を
(くっ、どんなに身体を
――ああ、そこそこ……もうちょっと右、そうそう、そこよ。
(な、何てテクニックなの!)
このわたしがここまで
(さてはプロのモフリストね!)
「おー、よしよし……ほれほれ、これでどうだ?」
――あひゃひゃひゃひゃ……ハァハァ、ゼェゼェ。
(いかん! 完全に奴のペースだ!)
どうにかしなければ――何か、何か無いのか⁉
「わしゃわしゃわしゃ――」
――うひゃひゃひゃひゃ!
逃げなきゃいけないのに、身体が言う事を聞かない。
――違うの、違うのぉ!
(こんなのわたしじゃない)
――わたしじゃないんだからぁ!
って、遊んでる場合じゃない……そこへ――
「やっと、見付けたわ!」
と少女の声が聞こえた。
――この声は……リムちゃん⁉
また面倒なのに見付かってしまった。
――ゴオォォォッ!
こちら目掛け、炎が飛んで来た。
「おっと」
青年はわたしを守るように
長身の割に身軽なようだ。
(まるで忍者ね)
「レン、動くと燃やすわよ!」
「いや、もう燃やしてるじゃねーか!」
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