第1章 2話 渡井の思い

「お疲れ様でしたー!」



ニュース番組が終わり、キャスト、スタッフの声が響き渡った。


ぞろぞろと待合室に移動すると、少し疲れた顔の渡井は休憩に移る。いつものように、小さな楽屋にちょこんと座ると、そのままカバンの中から、朝ごはんを取り出した。


その時、コンコンとノックする音が聞こえた。がちゃりと開けられたドアから久保がひょこっと顔を出す。


渡井は、すっと、手に取っていたビニール袋を机に置いた。



「今日もありがとうございました。

この間、ロケで京都に行って、よかったら、どうぞ。」


「ありがとうございます。八つ橋好きなんですよね。

 あと、今日のフォロー助かりました。」


「珍しいですよね、渡井アナがニュースでつっかえるなんて…

今度、お礼にジュースでも奢ってください。」


「いいですよ。何がいいですか?」


「冗談ですって、でもお言葉に甘えて、今度コーヒー奢ってください!

 来週もよろしくお願いします!」



そう言うと久保はスッと立ち去って行った。

芸人の中でも綺麗な顔立ちで人気のある久保を思い出して、ふと高校の時代の彼を思い出した。


クラスで1、2の人気を争っていた物静かな彼の横顔に似ていた。

あのニュースを、あの2人も見たのだろうか。何を思ったのだろう。



いつもより、ゆっくりとおにぎりを1.2.3の手順で作っていく。


久保からもらった八つ橋を見ると、少し元気が出てきて、不恰好なおにぎりにかぶりついた。

パリパリの海苔が喉につっかえるのを感じて、渡井は急いで水を流し込む。


高校の時、離れ離れになってしまった旧友がこの世からいなくなった。そんな時も、世界は周り、休む暇はない。


渡井はおもむろにスマホを取り出し、時間を確認する。

急いで、最後の一口を頬張り終えると、渡井は足早にデスクへと向かうのであった。







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イケメン、爆ぜよ 花道 @hana_mitchell

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