第56話

☆☆☆


この怪しいアプリを使ってくれそうな子なんているかな……。



コウダイと仲良くなるためとはいえ、得体のしれないものを人にオススメするのは気が引ける。



慎重に人を選ばないといけない。



そう考えながら翌日登校すると、またミキコが霊感の話でクラスメートたちを引きとめていた。



しかし、クラスメートたちの顔はうさんくさそうに眉をひそめたり、あくびをしたりしている。



さすがにミキコのデマに飽き飽きしてきているのだろう。



明らかにデマだとわかることばかり言っているのだから、長く続くわけがないと思っていた。



「ミキコの話って絶対に嘘だよね」



「だよね。霊感があるっていいながら、全然幽霊見せてくれないしさぁ」



そんな声がどこからか聞こえてきた。


このままだとミキコは蔭口を叩かれる対象になるかもしれない。



別にあたしには関係ないけれど……。



そう思った瞬間だった。



ふと、具現化アプリをミキコに使わせてみたらどうだろうと閃いたのだ。



ミキコは嘘をついてでも人気者になりたいと思っている。



一方、クラスメートたちはすでにミキコの嘘に飽き飽きしていてい、本気では相手にしなくなっている。



そんなときにミキコが具現化アプリを使って幽霊を出現させたら……?



ミキコの自尊心は保たれる上、クラスメートたちも喜ぶかもしれない。



そうとなれば、このアプリを利用させるターゲットはミキコに決まりだ。



ただ、残念なことにあたしとミキコはあまり接点がなかった。



これからその接点を作り、仲良くなって、自然な形でアプリをオススメしないといけない。



気の長い話だけれど、このアプリを試してみるのだからやってみる価値はある。



「ねぇ、あたしも怖い話大好きなんだけど、なにか聞かせてくれない?」



あたしはクラスメートたちに混ざり、ミキコに声をかけたのだった。


☆☆☆


それからあたしの計画はトントン拍子に進んだ。



ミキコがイジメられ始めたときはどうしようかと焦ったが、アプリを使うことでそれもどうにか回避することができた。



「今日はどんな幽霊を出現させてた?」



コウダイといつものファミレスで待ち合わせをしていた。



あたしはさっそく自分のスマホを取り出して画像を表示させる。



一件普通の階段を撮影しただけに見えるけれど、その階段は2つ並んで存在していた。



1つは屋上へと続く階段。



もう1つはミキコが出現させた13階段だ。



13階段の途中には吉田さんが立っている。



あたしは毎回、ミキコに気がつかれないよう、こうして写真を撮影していたのだ。



「13階段か。実態があるものだから、ちゃんと人が立つことができるんだな」



コウダイは写真を確認して関心したように何度も頷いている。

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