第55話
映像ではなく、実物が目の前に出現するというのだ。
そんな話、信じられるものじゃなかった。
「こんなアプリ、どこで見つけたの?」
「都市伝説のサイトを回ってたら、偶然見つけたんだ。咄嗟にダウンロードしてみたけど、公式サイトでダウンロードしたわけじゃないから、使うのが怖くてさ」
そう言うと、コウダイはアプリをダウンロードしたというページを見せてくれた。
「確かに、こんなところからダウンロードしたアプリは、使うのが怖いよね」
自分だって、使うのは嫌だった。
あたしはチラリとコウダイを見る。
「もしかして、このアプリをあたしに使わせるために呼んだの?」
そう聞くと、コウダイはビックリしたように目を見開いた。
「ノドカにそんなことするわけないだろ!」
思っていたよりも全力で否定され、今度はあたしが驚いてしまった。
次にコウダイは頬を赤らめて顔を伏せる。
え……?
その反応に一瞬心臓が高鳴った。
今の反応っていったいどういうこと?
なにかを期待してしまいそうで怖い。
「誰かアプリを使ってくれそうなヤツがいないかと思って、ノドカに相談したかったんだ」
「そ、そうなんだ……」
あたしはまだドキドキしている心臓に困惑する。
初めてコウダイに会った時からいいなと思っていたけれど、これじゃなんだか期待しているみたいだ。
「誰かいないかな? 好奇心旺盛な人……」
突然そんなことを言われても咄嗟には誰の顔も思い浮かばなかった。
このアプリが安全かどうかもわからないのに、自分の友人の名前を言うこともできない。
「ちょっと考えてみるね?」
あたしはそう言って、アプリがダウンロードできるサイトをお気に入りに入れて、帰宅したのだった。
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