第37話

☆☆☆


次の学校の七不思議もなんの問題もなくやり切ることができた。



休憩時間中に桜の木の下に女性の幽霊を出現させる。



授業に入ってしばらくしたころを見計らい、大きな声で「あそこに女性がいる!」と、声をあげたのだ。



当然A組の教室内は騒然となる。



先生が桜の木の下へと駆けつける前に消滅するように時間設定を行っていたので、戻ってきた先生は顔面蒼白。



もう授業どころではなかった。



今思い出してみても、先生の反応は面白くて笑えてくる。



グラウンドに出た先生は、教室の窓から見たはずの女性を探してグラウンドを3周もしていたのだ。



どれだけ探しても、もう女性は出てくることはないのに。



クラスメートたちは先生と一緒になって女性を探しに出たりしていたけれど、その姿もまた滑稽だった。



みんなして、いない女性を探してくれたおかげで、今日もまた授業の大半がなくなった。



「こんなことばっかりしてていいの?」



帰る準備をしていたとき ノドカが険しい表情で声をかけてきた。



「なんのこと?」



あたしは冷たい口調返す。



「偽物だって、いつかみんなにバレるよ?」



ノドカの言葉にあたしは噴き出してしまった。



「今さら何ってるの? まさか、あたしに説教しようとしてる?」



「あたしは、ミキコがやってることが間違ってるって言ってるの」



「アプリを教えたのはノドカなのに、どうして今さらそんなことを言うの?」



質問すると、ノドカは黙り込んでしまった。



あたしはゆっくりとノドカに近づく。



そして微笑んだ。



「あたし、その答えを知ってるよ?」



「え……?」



「コウダイくんが、あたしに興味を持っているから嫌なんでしょう?」



ノドカの耳に顔を近づけて囁く。



咄嗟にノドカがあたしから身を離した。



その顔は怒りで赤く染まっている。



目はつり上がり、まるで鬼みたいだ。



「図星?」



意地悪く質問するとノドカは「うるさい!」と、怒鳴り声を上げて教室から出て行ってしまった。



あたしはその後ろ姿をほくそ笑んで見送る。



ノドカは時々あたしを見下していたからいい気分だった。



このままノドカとの関係が壊れてしまったってかまわない。



だってあたしはもう有名になったんだから。



休憩時間のたびに色々なクラスメートたちが近付いてくるから、さみしいとも思わなくなった。



「後は本物の彼氏ができればなぁ」



そう呟いた時だった。



絶好のタイミングでスマホが震えた。



確認してみると、それはコウダイくんからのメッセージだったのだ。



あたしの心臓が大きく跳ねあがる。



まさかこんなタイミングでコウダイくんから連絡がくるとは思っていなかった。



あたしはゴクリと唾を飲み込んでスマホ画面を確認する。

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