第27話

ノドカはクスッと笑ってあたしを見た。



「そんなこと言ったって、これはミキコが好きでやったことだよね? 困ったときだけ頼られてもねぇ……」



クスクスと笑うノドカの態度に苛立ちが募る。



「なにそれ。あたしがみんなに詰め寄られてるのを見ても、なにも思わなかったの?」



こんなときだけノドカに頼るなんて間違っている。



自分でもわかっていたけれど、 ノドカの態度を見ると言わずにはいられなかった。



しかし、ノドカはあたしの言葉なんて無視して、スマホをいじりはじめてしまった。



「ちょっと、聞いてるの?」



声を荒げてそう言い、ノドカの手からスマホを奪い取る。



「なにすんの!?」



ノドカがスマホを取り返す前に、スマホ画面が見えてしまった。



そこには男の人とのメッセージ画面が表示されている。



《ノドカ:昨日は楽しかったね! またデートしようね》



ハートの絵文字付きでそう書かれているのが見えたのだ。



「返してよ!」



次の瞬間にはノドカに奪い取られてしまっていた。



「ちょっと……今のなに?」



つい、声が低くなり威嚇するような声色になってしまう。



「な、なにってなにが?」



ノドカは必死で隠そうとする。



「今の、男の人とのメッセージだよね?」



そう聞くと、ノドカはあきらめたようにため息を吐きだした。



「そうだよ」



「それって誰? なんでハートの絵文字なんて送ってるの?」



「前に1度言ったでしょ? 好きかも知れない人がいるって」



そう言われて、あたしはその時の会話を思い出した。



あの時ノドカはメッセージをしながら頬を赤らめていたんだっけ。



「その人とうまく行ったってこと?」



質問すると、ノドカは頷いた。



「他校の人なんだ」



そう言って写真を見せてくる。



そこに映っていたのは鼻筋の通ったカッコイイ男子生徒だったのだ。



あたしは自分の目を疑った。



ノドカはいつの間にこんな人と知り合ったんだろう。



あたしが人気者になるために必死になっていた時に、ノドカはこんな恋愛をしていたなんて……!



そう考えると、とたんに腹が立った。



ノドカはあたしを称賛しながらも、影では笑っていたのではないかと思えてきたのだ。



細かいことを問い詰めようとした時だった。



教室のドアが開いて先生が入ってきた。



「みんな、いったん席につけ!」



暴走族騒動で騒ぎになっていた教室内が、ひと先ず静かになる。



「みんなもう知ってると思うけど、さっきまで校庭に暴走族が侵入してきていた。学校内にも入り込んできたけれど、もう大丈夫だ。警察が来て、追い返してくれたからな」



全員へ向けてそう言うと、先生があたしへ視線を向けた。



「それと、飯田。お前はどうして暴走族が来ることを知っていたんだ?」



先生の表情は険しい。



まるであたしを非難しているように聞こえて、瞬きを繰り返した。



「言ったじゃないですか。夢で見たって」



「そんな話誰が信じるんだ。まさかお前、あの連中と知り合いなんじゃないか?」



先生がそう言った瞬間、教室内に多きなざわめきが起こった。



あたしは驚いて目を見開く。



「そんなわけないじゃないですか!」



「先生だってそう思いたい。でもな、吉田もいまだに行方不明だろ? もしかしたら今回の騒動と関係があるかもしれない」



なんでそんなことになるの!?



心の中でそう思っても、絶対に口には出せなかった。

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