第28話
それに、どちらもあたしが出現させたことだから、先生の憶測も正しいのだ。
「あたしは暴走族に知り合いなんていません」
あたしは先生の目を真っすぐに見て言い切った。
ここは信用してもらう他なさそうだ。
「あたしもそう思います」
手を上げて発言したのはノドカだった。
ノドカは含み笑いを浮かべてあたしを見つめている。
助け船を出してくれたのはありがたいけれど、その表情は完全にあたしをバカにしていた。
あたしはうつむき、下唇を噛みしめる。
「あたしも! それに、予知夢もあると思います!」
クラスメートが大きな声で言う。
あたしのことを信用している生徒たちが次々と手を上げて発言してくれたおかげで、先生も仕方なく納得してくれた。
「もしも本当に予知夢だとすれば、お前の手柄だ」
先生は呆れたようにそう言い、教室を出ていったのだった。
☆☆☆
「今回は危なかったねぇ」
先生が出て行ってからノドカがすぐに近づいてきた。
あたしはノドカと視線を合わさない。
「暴走族が来て1時間授業が潰れたのはラッキーだったよ、ありがとうね」
「うるさい!」
人を見下した声色に腹が立って言い返した。
ノドカは声を上げて笑う。
「ねぇノドカ、さっきの会話聞いちゃったんだけど、彼氏ができたって本当?」
マナミとリサが近付いてきてそう言った。
マナミとリサは恋愛の話しが大好きだから、聞き逃さなかったみたいだ。
途端にノドカは頬を赤らめる。
「そんなんじゃないよ……」
「隠さなくてもいいじゃん」
マナミはそう言うとノドカをせっついて写真を見せてもらっている。
「嘘、これがノドカの彼氏!?」
「すっごいカッコイイじゃん!」
2人とも目をハートマークにして喜んでいる。
「そ、そこまでじゃないよ」
ノドカは謙遜しながらも嬉しそうにほほ笑む。
「なになに? ノドカの彼氏?」
「そうみたい! 見てみて、すっごいイケメンだよ!」
途端に恋愛好きな女子生徒たちが集まってくる。
あっという間にノドカはクラスメートたちに囲まれてしまった。
「な、なによ……」
あたしが幽霊を見たと言った時はあたしに群がってきてたくせに!
強い嫉妬心が胸に湧き上がってくる。
所詮みんな幽霊よりも恋愛話しの方が好きなのかも知れない。
それなら、あたしだって……!!
そう思うが、恋愛をする前に好きな相手がいなかった。
好きになるにしても、ノドカの彼氏よりもカッコよくないと格好がつかない。
教室内を見回してみても、ノドカの彼氏以上の生徒なんて1人もいない。
あたしはイライラと親指の爪を噛んだ。
「ミキコも彼氏が欲しいんでしょう?」
その言葉に振り向くと、いつの間にかノドカが立っていた。
「別に?」
強がりを言ってそっぽを向く。
今ノドカの顔を見たくなかった。
「ミキコも彼氏作ればいいのに」
「そんな簡単にできるわけないでしょ?」
人をバカにしているのかと思ったが、以外にもノドカは真剣な表情だった。
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