第23話
「それいいかも!」
そう言い、さっそく具現化アプリを使って首だけの男を出現させた。
今回も2時間で消滅するように設定しておいた。
「これでよし!」
「それにしても、本当にリアルだよね……」
首の切断面までしっかり再現されているため、ノドカは顔をそむけている。
20代後半くらいの生首の男は宙に浮いてジッとこちら見つめている。
閉じられた目が時折開かれるので、その度にビクリと体を震わせた。
「それにしても、吉田さん本当にどこに行ったのかな?」
教室へ戻りながら、ノドカがまた聞いてくる。
「わからないよ……」
「……本当はミキコがなにかしたんじゃない?」
そう聞かれて思わず立ち止まってしまった。
目を見開いてノドカを見つめる。
一瞬、ノドカは全部知っているのかと思った。
しかし……。
「そのアプリを使って殺人者を呼び出したりもできると思うし?」
と言われて、見当違いだということがわかった。
「それで吉田さんを殺してもらったって思ってる?」
聞くと、ノドカは悩むように首をかしげ、それから左右に首を振った。
「思わない。吉田さんやマナミたちは確かにウザイけど。殺すほどじゃないしね」
その言葉にあたしは微笑んだ。
「そうだよね。早く教室戻ろう」
殺人犯や誘拐犯を出現させるという考えはなかった。
自分の手を汚すことなく、嫌な相手を殺す方法としてはいいかもしれない。
あたしはそんなことを考えたのだった。
☆☆☆
放課後になると、クラスメートたちがあたしの机の周りに集まってきた。
「今日はミキコが霊がいるかどうか見てくれるんだよ!」
クラスメートたちはやけにはしゃいでいて、吉田さんがいなくなったことなんて忘れてしまったかのようだ。
「幽霊は噂をすれば出てくるから、きっと今日見ることができると思うよ」
あたしは自信満々に言って席を立った。
「それ、あたしも聞いたことある!」
「でしょ? 今朝から生首の男の話をしてたから、今はすごく霊気を感じるの」
「じゃあもしかして……?」
「行ってみればわかるよ」
あたしはクラスメートたちの先頭に立って歩き出す。
他のクラスの子たちとすれ違う時時々「ミキコちゃんだ」という声を聞いて振り向いた。
「すごいね。他のクラスの子たちからも有名になってるんだ」
ノドカに言われてあたしは「え?」と聞き返す。
「知らないの? トイレの幽霊や音楽室の幽霊がいるって言い当てたのは学校中の噂だよ?」
「そ、そうなんだ」
少しは注目されはじめたと感じていたけれど、ここまでとは思わなかった。
いろんな生徒たちからの視線を感じて、自然と体が熱くなるのを感じ始める。
人に注目されるのって気持ちいい!
校庭にたどり着くと、あたしはブレスレッドを取り出した。
「それなに!?」
すぐさまクラスメートが食いついてくる。
「水晶だよ。これをつけると神経が研ぎ澄まされて、幽霊の居場所がわかるようになるの」
嘘が簡単に口から出てくる。
このブレスレッドも100円で買ったオモチャで、水晶なんかじゃない。
あたしはブレスレッドを握り締めて大きく深呼吸をする。
クラスメートたちが緊張した雰囲気になり、静まり返った。
「こっちからなにか感じる」
呟き、校舎裏へと向かう。
ブレスレッドを付けた手を前に出し、探るように歩いていく。
その瞬間だった。
「キャア!!」
一緒にきていたクラスメートの1人が悲鳴をあげた。
ハッと息を飲んで立ち止まる。
悲鳴が聞こえた方へ視線を向けると壁に沿うようにして生首が浮かんでいたのだ。
「これだ!!」
あたしは叫び、ブレスレッドを生首へ向ける。
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