第20話
☆☆☆
その日の夜、連絡網で吉田さんがいなくなったことが回ってきた。
今、ご家族の人が総出で探しているらしいが、見つかっていない。
クラスメートたちは吉田さんと連絡が取れたら電話することになっているようだ。
「こんな時間になっても家に戻ってきてないなんて……」
あたしのお母さんはそう呟き、心配そうに時計を見つめた。
時刻は11時近い。
あたしはスマホを取り出し、一応吉田さんにメッセージを送ってみた。
《ミキコ:どこにいるの?》
そのメッセージに既読がつくことはなかったのだった。
☆☆☆
翌日、学校へ行くと話題は吉田さんのことでもちきりだった。
特に仲が良かったマナミとリサは本気で心配していて、ずっとスマホを握り締めて吉田さんからの連絡を待っていた。
そんな中、あたしは昨日の出来事を思い出していた。
アプリで出現させた階段と一緒に消えてしまった吉田さん。
彼女は今どこにいるんだろう?
まさか、この世から消えてしまったんじゃ……?
そう考えて身震いをした。
あの時どうして吉田さんに声をかけなかったんだろう。
階段から降りる時間は十分にあったのに、あたしはなにも伝えなかった。
どうなるのか知りたかったのもある。
だけど一番の理由は……吉田さんに消えてほしかったから。
その答えに行きついたとき、あたしは自分の体を抱きしめた。
吉田さんの存在が疎ましかったことは事実だ。
「ミキコ、どうしたの?」
1人で思い悩んでいるとノドカに声をかけられ、ハッと我に返った。
いつの間にか朝のホームルームが終わっている。
「な、なんでもないよ」
「でも、顔色が悪いよ? 保健室に行く?」
「そう? 本当に大丈夫だから」
あたしは無理やり笑顔を浮かべた。
保健室で1人になると、余計に色々なことを考えてしまいそうで嫌だった。
「それにしても、吉田さんどこに行ったんだろうね?」
ノドカの言葉にあたしは返答できなかった。
吉田さんは消えたよ。
あたが出現させた階段と一緒に、消えていなくなったよ。
そんな言葉が喉まで出かかった。
「ねぇねぇミキコ!」
他のクラスメートの声がして、振り向く。
「な、なに?」
聞きながら救われた気分になって安堵のため息を吐き出す。
「あたしたち考えてたんだけど、もしかして吉田さんって幽霊に連れて行かれちゃったんじゃない?」
「幽霊?」
あたしは眉間にシワを寄せて聞き返す。
「うん! 吉田さんってさ、ミキコの言葉を信用してなかったじゃん? でも、幽霊って、自分の存在って信用していない人間を連れて行っちゃうって聞いたことがあるんだよねぇ」
クラスメートは目を輝かせて言う。
「そ、そうなんだ?」
「あれ? ミキコは霊感があるのに知らなかったの?」
そう聞かれ、あたしは慌てて「そ、そういえば昨日は学校内ですごく嫌な雰囲気がしてた」と、早口で言った。
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