第21話

「え、そうなの!? 昨日はなにもなかったんじゃないの?」



「あまりに嫌な雰囲気だったから、黙ってたの」



「そうだったんだ。じゃあやっぱり吉田さんは連れていかれちゃったのかな……」



「そうかもしれない」



あたしはチラチラとノドカの反応を気にしながら頷く。



ノドカは目をパチクリさせてあたしを見ている。



「もしかして、今日もなにか感じるとか?」



「今日は特に……」



昨日のことがあったから、幽霊を出現させる準備だってしてこなかった。



「あたし、ひとつ気になる噂聞いちゃったんだ」



クラスメートがさらに話を掘り下げる。



「噂?」



ノドカが聞き返した。



「うん。この学校は昔処刑場だったっていう噂! 校庭の隅に首だけの男が現れるだって!」



「それならあたしも聞いたことある! この学校の七不思議のひとつだよね」



ノドカが興味津々と言った様子で食いついた。



「ねぇミキコ。その霊が本当にいるのかどうか、確認できないの?」



クラスメートにそう言われ、あたしはノドカへ視線を向けた。



ノドカはウインクをしてくる。



チャンスだと言っているみたいだ。



今日はそんな気分じゃないんだけれど、仕方がない。



学校の七不思議はすべて出現させるつもりでいたし、吉田さんの時のようなことをしなければいいだけだ。



あたしは自分にそう言い聞かせた。



「わかった。放課後確認してみるね」



あたしはクラスメートへ向けてそう言ったのだった。

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